会社の経営不振や債務超過などが原因で、債務整理を行う場合いくつかの方法があります。しかし、似たような方法があるため混同してしまう方も少なくありません。
この記事では、株式会社が利用できる特別清算の手順と、混同しやすい制度との違いについて解説していきます。
会社整理と特別清算の違いとは?
特別清算と混同されやすい制度として「会社整理」があります。会社整理というフレーズは、単に会社の負債などを整理する行為自体を指すこともありますが、かつてあった再建手続きのことを言う場合もあります。
そもそも会社整理は、特別清算と同様に株式会社のみが利用できる制度でした。裁判所が監督し、財産の保全処分や管理命令が出されます。そして、取締役は続投できますが、再建案は債権者全員の同意がないと利用できないものでした。
商法第381条により、債務超過・支払い不能またはその疑いがある株式会社を再建するための制度として利用されていましたが、2005年に法改正され、現在は廃止されています。
再建型の債務整理としては、
- 会社更生
- 民事再生
が用いられています。
特別清算は、会社整理とは異なり清算型の手続きです。「債権者の同意を得る必要がある」「株式会社のみが利用できる」という共通点はあるものの、あくまでも会社を締めるための手続きです。
特別清算の手続きはどのような流れで行われる?
特別清算には協定型と和解型の2種類があり、それぞれの手順について紹介します。
協定型
まずは、協定型の流れを見ていきましょう。
【事前準備】
特別清算は、破産と比べて簡易かつ迅速な手続きが可能ですが、裁判所や債権者への手続きを行わなければならないので、早いうちから準備を進めていきましょう。
必要書類をまとめる、清算人を決めておく、必要な場合は弁護士への依頼、などをしておくとその後の手続きがスムーズです。
【株主総会】
特別清算は、解散した株式会社が利用できる清算方法です。株式会社が解散するためには、株主総会で解散決議を行わなければなりません。
【解散登記】
会社が解散したら、2週間以内に解散及び清算人の選任についての登記をします。清算人会を設置する場合、清算人会設置会社であることを登記しなければなりません。
解散登記に必要な書類は、
- 定款
- 株主総会の議事録(解散決議をした場合)
- 清算人の就任承諾書 ※
- 株主の名簿
- 印鑑届書
※ 法人の代表者が清算人となる場合や、裁判所が清算人を指定した場合は不要
このほか、以下の通りの登録免許税の支払いも必要です。
解散登記:30,000円/件
選任登記:9,000円
【公告】
債権者に会社の解散を知らせるためにも、官報公告を行います。官報は政府が発行している新聞的なもので、法律の改正や破産や解散の公告が掲載されています。
【裁判所への申し立て】
管轄の裁判所へ、特別清算申立書と必要な添付書類を提出します。この時に協定案の草案も裁判所に提案します。
【特別清算開始命令】
裁判所から開始命令が出たら、債権者集会に移ります。なお、申し立てが却下された場合は特別清算ではなく破産手続きを行います。
【債権者集会】
協定型の場合は債権者集会を開き、債権額の2/3以上あるいは債権者の過半数の同意を得なければなりません。
【特別清算終結】
債権者からの同意を得て、協定を実行したら特別清算終結が決定されます。管轄の登記所に特別清算終結登記を行い、清算人は登記を行ってから10年間資料を保管します。
清算人による保管が難しい場合は、裁判所へ申し立てて代理の保存者を決めます。
和解型
和解型で特別整理をする場合、【特別清算開始命令】までは協定型と同じです。和解型は債権者に個別で和解交渉を行うので、集会を開催する必要はありません。
債権者によって異なる和解が可能ですので、協定型と比べると柔軟性が高い方法だと言えるかもしれません。
和解を行った後は特別清算終結決定をし、登記を行い手続き完了です。
まとめ:会社整理と特別清算の違いや特別清算の流れについて
会社の債務整理の法律は複雑ですし、改正されることもあるので定期的にアップデートすることが望ましいです。
会社整理と特別清算の違いや、特別清算の手順が分からなくなってしまったらぜひ本記事をご覧になってください。