2020.12.21

破産手続の費用が不足したら?個人・法人の破産手続の廃止を解説

破産は経済が著しく悪化した際の最終手段といえるものですが、その手続には費用がかかります。では、費用が不足する場合はどうしたらいいのでしょうか?

今回は、費用が不足した場合の破産手続や、破産手続の種類について詳しく解説していきます。

破産手続の種類と破産手続の停止

破産手続には2つの種類があり、破産人が負担する費用と密接な関係にあります。費用が不足する場合にはどのような手続になるのか、破産手続の種類から考えてみましょう。

破産手続の「管財事件」と「同時廃止事件」

破産手続には、「管財事件」と「同時廃止事件」があります。

破産手続は裁判所が選任した破産管財人が破産者の財産を管理・調査し、その財産を処分することで債権者への配当とするものです。この一般的な破産手続を「管財事件」といいます。

一方で、破産者に管理・調査する財産がなかったり、裁判費用を賄うのも難しい状況であったりする場合には、破産管財人の調査などは意味のないものになるでしょう。このような状況が破産手続前にあきらかな場合は、破産手続の開始と同時に手続を打ち切ります。手続を打ち切ることを「破産手続の廃止」、破産手続の開始と同時に廃止したものを「同時廃止事件」といいます。

同時廃止事件となった場合は、破産管財人の管理・調査などがおこなわれないため費用負担が少なく、短時間で終わります。

3種類の破産手続の廃止

破産手続の廃止は、同時廃止の他に2種類あります。

  • 同時廃止…破産手続の開始と同時に廃止
  • 異時廃止…破産手続を開始後、破産管財人の調査結果などによって廃止
  • 同意廃止…配当を受けられる債権者すべての同意によって廃止

同時廃止と異時廃止は、破産者に処分する財産がないなどの場合に適用となる点が同じで、異なるのは廃止のタイミングです。異時廃止は破産管財人の選任が終わり、手続きが進む中で廃止決定が下されます。同時廃止と同様に裁判所が判断することもありますが、異時廃止では破産管財人の申し立てによる廃止決定も可能です。

同意廃止は、他の2つと異なり破産人の財産状況が関係なく、債権者の申し立てによって破産手続を廃止します。しかし、破産手続の廃止は債権者への配当がないため、同意廃止の申し立てはほとんど実施されていません。
注)債権者すべての同意がなくても同意廃止になるケースもあります。

それぞれの破産手続の関係は、一般的な破産手続として管財事件と同時廃止事件とがあり、管財事件の手続の結果として、異時廃止や同意廃止の可能性があるということになります。

同時廃止と異時廃止が認められる条件

同時廃止や異時廃止は破産法に基づいて裁判所が決定しますが、具体的にはどのような条件となっているのでしょうか。より詳しく確認してみましょう。

破産法の示す条件とは?

破産法には、破産手続を廃止する要件として「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」としています。

「破産財団」とは、破産手続の換価処分の対象となる財産のことで、破産後の所有が認められる自由財産以外の財産を指します。「破産手続の費用を支弁する」とは、破産手続の費用を支払うことです。つまり、破産法では「自由財産を除く財産で破産手続の費用を支払えないとき」に破産手続の廃止を認めています。

では、ここでいう破産手続の費用とはいくらなのでしょうか?これは申し立てをする際に裁判所に支払う費用ではなく、破産管財人が破産手続を進めるのに必要な実費などのすべてを含みます。中でも優先されるのが破産管財人への報酬です。そのため裁判所では、破産管財人に対する最低限の報酬を支払えるかを、判断基準にしているところが多いようです。

個人の破産手続の廃止

破産人が個人である場合には、同時廃止事件として扱うことは少なくありません。明らかに処分できる財産がないというケースは多いからです。

一般的に個人の破産が管財事件になるのは次のようなケースです。

  • 経営者や法人の代表であった
  • 一定以上の財産を保有している
  • 多額の債務を抱えている(または債権者が多い)
  • 33万円以上の現金がある など

相応の財産を保有していると考えられるケースは管財事件になるといえます。ここでの「一定以上の財産」は裁判所の判断となりますが、20万円が1つの目安となっており、住宅や車、生命保険など、時価20万円を超えるものが1つでもあれば管財事件となるのが一般的です。現金は、標準的な1世帯の生活費が33万円であることから、自由財産の範囲であっても同様の扱いになります。

一方で借金が多くても管財事件になるのは、その金額を借り入れられるだけの担保があったと考えられるためです。相応の財産があるとみなし調査が必要になります。

法人の破産手続の廃止

法人の場合はどうでしょうか?破産人が法人の場合は、管財事件とするのが一般的です。
保有する財産を算定するだけでも容易ではなく、破産手続の開始と同時に判断できるものではありません。そのため、破産管財人の調査が不可欠といえます。

当然ながら調査の結果として破産手続の廃止が決定することはあるため、法人の破産は通常、管財事件か異時廃止のどちらかで終了することになります。

まとめ:破産手続の費用が不足したら?個人・法人の破産手続の廃止を解説

破産手続にも費用が必要と聞くと、破産できないのではと不安になる方もいるでしょう。しかし費用負担を抑える方法はあり、裁判所は財産のない人に無理に支払わせるような判断は下していません。

とはいえ、実際に破産手続が開始されるまではわかりません。心配な場合は、無料相談などを利用して専門家にアドバイスをもらってはいかがでしょうか?

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