2021.2.4

詐欺破産罪と判断された事例をご紹介

詐欺破産罪は、財産隠し等の不正行為を債権者に害を与えるために、故意的に行ったと見なされるかどうかが判断の分かれ目となります。

普段あまり馴染みのない犯罪ですが、

  • 通常の詐欺罪とはどのような違いがあるのか
  • 実際に詐欺破産罪だと判断された例はあるのか

以上について、本記事の中で詳しく紹介していきます。

通常の詐欺罪と詐欺破産罪はどう違う?

まずは、詐欺破産罪と通常の詐欺罪の違いについて解説していきます。通常の詐欺罪は、刑法246条にて「人を欺いて財物を交付させた者」「不法の利益を得た場合や他人に得させた者」は10年以下の懲役に処するとされています。

一方で、詐欺破産罪の対象となるのは主に破産者や協力者です。破産法265条では債権者を害する目的をもって、財産を隠す、不正に譲渡した、故意に価値を落としたと認められると10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金刑または併科と定められています。

このように、詐欺罪と詐欺破産罪には

  • 管轄する法律
  • 被害者の行為の有無
  • 刑罰の内容

が異なります。

破産詐欺罪と判断された過去の事例

実際に破産詐欺罪で立件された事例にはどのようなものがあるか見てみましょう。

学校法人

2013年に、関東のとある学園の理事長が詐欺破産罪などの罪で起訴された事件がありました。学校法人の破産手続き開始が決定された後に、理事長だった男性が学校の資金約1,000万円を以前の住んでいた建物に隠したとされています。

さらに学園が所有していたマンションの契約書を偽造した私文書偽造にも問われ、結果として懲役1年4ヵ月の判決が下されました。

旅行会社

2018年には、旅行会社の元代表が詐欺破産罪で再逮捕された事件も報じられました。元々この旅行会社は、複数年に渡って粉飾決済を行っていたり、銀行をだましてメインバンクから2億円、他の銀行から1億5,000万円を奪い取った通常の詐欺罪でも立件されていました。

上記の事件に加えて、破産を見越して資産およそ1,000万円を自宅に隠した詐欺破産罪の件も問われています。破産管財人には財産はないと話していたにも関わらず、後の捜査で自宅から現金が見つかっています。

このような故意の財産隠しは、詐欺破産罪だけでなく破産法252条により免責不許可事由として認められます。免責不許可と判断されると、債務の免責(返済義務がなくなること)が認められずそのまま借金が残ることになります。

破産犯罪は他にもある

詐欺破産罪は破産犯罪の1つですが、破産時の不正行為が犯罪になる例は他にもあります。

  • 特定の債権者にのみ担保供与する
  • 説明および検査の拒絶
  • 重要財産の開示を拒絶
  • 業務及び財産の状況に関する物件の隠滅
  • 審尋(裁判所での面談)での説明拒絶
  • 破産管財人などの職務を妨害

など、債権者に害をもたらす不正な動きは法律で禁じられています。そもそも、破産という制度は借金を免責する代わりに債権者の利益を優先させる法的な手続きです。債権者にとって公正ではない行為を抑止するために、それぞれの行為に刑罰が設けられています。

ただ、これらの行為をしたからといって即逮捕されるということは珍しいようです。(免責不許可や民事での訴訟はあります。)

まとめ:詐欺破産罪は詐欺事件とどう違う?判例についてご紹介

詐欺破産罪は通常の詐欺罪とは異なり、「破産時に債権者に害を与える不正行為」が対象になることが分かりました。本文中でも紹介した判例のように、虚偽の説明をして財産を隠す行為は詐欺破産罪の典型だと言えます。

詐欺破産罪やその他の破産犯罪だと判断された場合は、免責が認められなくなることを念頭に置いて適切な手続きを行いましょう。

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