2021.8.17

自己破産後の生活はどう変わる?誤解多き破産の真実に迫る!

自己破産後の生活はどう変わる?誤解多き破産の真実に迫る!

「自己破産後の生活が不安で破産に踏み切れない…」
「経営者が自己破産するとその後どうなってしまうのだろう…」
そもそも自己破産は救済措置ですが、全てを失うというイメージがあり、自己破産後の生活に関して多くの誤解が生まれてしまっています。自己破産を検討されている方にとってみれば、事実を知り自己破産後の生活がどうなっていくのかを、なるべく具体的にイメージされたいですよね?

そこで今回は、「経営者を含めた破産者の自己破産後の生活変化」と、「経営者に限った自己破産後の生活変化」について解説していきます。

自己破産とは?

自己破産とは、自身が抱えた負債を支払えなくなったとき、裁判所に申し立てることで返済義務をなくす(免責)ことができる制度を指します。

借入をする際は返済の目途が立っていても、情勢の変化などで返済できなくなることがあります。その際に借金を0にできる自己破産は、再スタートを切るためには有効な制度と言えます。

しかし、自己破産をすれば未払いの税金などを除いて借金の返済義務はなくなるものの、それと共に自身の持っている財産を換価処分しなければならないため、基本的に財産を持つことができません。

自己破産の種類

自己破産には、同時廃止事件と管財事件の2つの種類が存在します。まずはそれぞれ見ていきましょう。

同時廃止事件

同時廃止というのは、財産を換価処分する破産管財人が選任されず、破産手続きの開始と同時に破産が終了することをいいます。文字通り、破産手続き開始と廃止が同時に行われるため同時廃止と呼ばれています。

破産手続きは、破産者の財産を換価処分して弁済することを原則としていますが、財産が明らかにないということであれば、破産管財人を選任して進める必要はなくなります。つまり、財産を本当に持っていない場合、同時廃止事件として処理されるのです。
<破産法216条1項>
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
引用:破産法216条1項

同時廃止事件となれば、開始と同時に廃止も行われるため、破産手続きに要する期間がなくなりますし、費用面でも安く抑えられます。曖昧な申立書は調査が必要とされてしまうことがあるので、同時廃止事件で進められるよう明瞭な申立書を作成するのが望まれます。

管財事件

管財事件になるのは、一定以上の財産がある場合や曖昧な申立書により調査となった場合です。管財事件では破産管財人が選任されて、破産者の財産などの調査、債権者への配当、現金への換価するわけですが、調査の結果、配当すべき財産がない場合は破産手続が終了(異時廃止)します。

破産管財人として選任されるのは、主にその地域で破産管財人としての登録をしている弁護士で、裁判所と破産者、債権者との間を取り持ち、手続きを公平なものとして進行していきます。

ちなみに、個人の自己破産の場合には、同時廃止事件が選ばれることが多く、管財事件が選ばれることは多くありません。
また、管財事件の場合であっても個人の自己破産では、簡素化されて予納金も少なくて済む、少額管財という手続きで進められることが通常です。

自己破産後に起きる生活の変化は誤解だらけ?

自己破産をすると、自己破産後の生活として自身だけではなく家族にも影響してきます。しかし、自己破産はあまり身近なものではないため、自己破産後に起こる生活の変化として、事実ではないことが信じられていることもあります。自己破産の真実を知ることで自己破産を検討されている方は、正しい判断ができるのではないでしょうか?

自己破産後の生活はどうなる?

それでは、自己破産後の生活がどうなるかについて見ていきましょう。

自己破産後のお金はどうなる?

自己破産をしても、最低限の現金(99万円以下)は手元に残しておくことができます。

自己破産後の車やバイクはどうなる?

自己破産では資産とみなされるものは処分しなければなりませんので、車やバイクも処分対象になりますが、そもそも換価できないものは残すことが可能です。

詳しくは、自動車・バイクのローンが残っている場合と完済している場合とで、処分の条件は変わってきます。ローンが完済されている場合には時価が20万円以上である場合、原則として処分・弁済に充てられます。ローンが残っている場合には、ローン会社との契約により完済するまでの間は、所有権がローン会社に留保されていることが通常です。そのため、ローン会社に自動車・バイクは引き揚げられてしまいます。

自己破産をすると車やバイクは絶対に残せないというイメージがありますが、これは誤解であり、価値と見なされなければ持ち続けられるのです。

自己破産後も自動車を維持したい場合にはどうすればいい?

自己破産後は本人が自動車ローンを支払い続けていくことはできませんが、本人以外の第三者が代わりとなって自動車ローンを返済する形であれば、維持可能です。(債権者の同意が得られる場合)

また、第三者の方に自動車を買い取ってもらい、その方から借りて自動車に乗るという形も、債権者の同意が得られれば可能です。

さらに例外的ではありますが、自動車が生活上不可欠であることを裁判所に認められれば、自動車の維持が可能です(自由財産の拡張)。ただしこちらも、ローンが残っている場合は不可です。

自己破産後の家具や服はどうなる?

自己破産をしても家具や服、衣類といった生活するために最低限必要とされるものは処分されずに残すことができます。

自己破産後の収入や財産はどうなる?

自己破産後に得た収入や財産に関しては、処分されることなく原則として自由に使用することができます。

自己破産後でも家は借りられる?

自己破産をしたからといって、賃貸契約ができなくなるということはありません。自己破産後であっても一定の収入があり、支払い能力があれば問題なく住まいを見つけることが可能です。ただし、信用情報機関に加盟している家賃保証会社による入居審査では、ローンの状況や自己破産の情報も含まれていますので、入居審査が通らないこともあります。

自己破産前の物件に住み続けることはできる?

賃貸物件に住んでいた場合に自己破産をしたとしても、そのまま住み続けることができます。ただし、賃料が収入に対して明らかに高すぎるような場合は、破産管財人が賃貸借契約を解除することがあります。もちろん、自己破産後に家賃を滞納してしまったら、賃貸物件から追い出される可能性はあります。

自己破産の事実は職場に知られてしまう?

自己破産をしても職場に知られることはありませんし、職場にその事実を知らせる必要はありません。ただし、自己破産の申請から免責許可までは就けない職業がありますので、そのような仕事に従事している場合には報告せざるを得ないでしょう。

自己破産後は海外への渡航はできない?

自己破産後であっても海外に渡航する自由はあります。ただし、自己破産の手続き中は転居や長期の旅行は制限されます。

自己破産後の選挙権はどうなる?

選挙権も自己破産後であっても、これまでと変わりなく無くなることはありません。

自己破産歴は住民票に掲載される?

住民票や戸籍謄本に、自己破産の有無が記載されることはありません。

自己破産後でも借入が可能?

自己破産をすると、信用情報機関へ登録されて借入が難しくなります。金融機関は融資を決定する際に、信用情報機関の個人情報を調査するため、登録されている間は通常借入はできません。ただし、信用情報の登録期間は5年~10年ですので、それ以降であれば借入は可能になってきます。

事故情報の掲載期間
信用情報機関掲載期間加盟店舗
JICC5年消費者金融/信販会社
CIC5年クレジットカード会社/信販会社
KSC10年銀行/協同組合/信用金庫

損害賠償金はどうなる?

損害を与えてしまった場合の損害賠償金は、自己破産をしても免責されることはありません。

住宅はどのように処分される?

住宅は競売もしくは任意売却より処分されます。競売は、債権者が裁判所の判決や抵当権などの担保権を根拠に、債務者の保有財産を処分する手続きを指します。

自己破産後の年金はどうなる?

給与や年金は制限されませんので、そのまま受け取ることができます。ただし、年金担保貸付を受けている場合は、その債務は免責されませんので、債務が完済するまでは年金を受けとることができない場合があります。

自己破産は友人や近所の方に知られてしまう?

自己破産の事実は、基本的に友人や近所の方に知られることはありません。自己破産の情報は官報には掲載されますが、ほとんどの方は見ていません。

自己破産後は妻や子供に影響はある?

自己破産をすると、破産者の財産と見なされるものは処分されるため、住宅を家族で共有していたり、妻が保証人になっていたりする場合には影響があります。しかし、妻や子供名義のものは破産時の対象になりませんので、例えば妻の自動車や妻名義の所有物などに関しては影響ありません。

自己破産をすると、子供の進学について気にされる方もいますが、進学の制限はなく影響しません。ただし、奨学金を利用する場合、自己破産をされた方は保証人になることができないため、その他の人が保証人になる必要があります。

自己破産後は生活保護を受けることはできる?

自己破産をしても、生活保護を受けることは可能です。ただし、一般的な生活保護受給条件と同様に仕事ができなかったり、最低限の収入がなかったりしないと、受給対象にはなりません。

自己破産後の携帯電話はどうなる?

自己破産後は信用情報機関に自己情報が掲載されることになりますので、その間は分割で携帯電話本体を購入するのは難しくなります。また、携帯電話の通話料金も免責されて支払う必要はなくなりますが、携帯電話会社間で情報共有を行っており、その携帯電話会社との契約だけでなく、他の携帯電話会社との契約ができなくなってしまうこともあります。

自己破産で生命保険はどうなる?

生命保険には掛け捨てと積み立て型がありますが、保険を解約した際にお金が戻ってくる額(解約返戻金)が20万円を超える場合は、処分の対象になります。

自己破産後は再度自己破産することはできるのか?

自己破産をしても、免責から7年以上経っていれば再度自己破産をすることは可能です。破産法で免責許可決定の確定した日から7年以内は、再度の免責決定は原則としてできない旨を定めています。

自己破産で保証人・連帯保証人はどうなる?

なかなか自己破産に踏み切れないのは、やはり保証人・連帯保証人に迷惑をかけられないという理由でしょう。保証人や連帯保証人がいた場合、自己破産により借金の返済義務は保証人や連帯保証人にうつります。そして、うつった借金に関して一括返済を求められます。

自己破産をしなければならない程の借金の一括返済ですので、保証人や連帯保証人も債務整理が必要になることは往々にしてあります。

自己破産すれば離婚した方がいい?

自己破産後は離婚した方が何か得になるのではないか?離婚しなければ多大な迷惑をかけてしまうのではないか?と思うかもしれませんが、家族が保証人となってなければ、家族の財産が差し押さえされることはありません。また、多大な債務を抱えているよりも、長い目で見て一度整理をした方が迷惑はかからないと考えられます。ですので、自己破産をしたら離婚しなければならないということはなく、別物の話です。

自己破産後はクレジットカードを使えなくなる?

自己破産をすると、新たな借金はできないため契約中のクレジットカードの利用は継続できなくなります。クレジットカードは、購入代金をカード会社が一時的に立て替える仕組みであり、つまりはカード会社へ借金しているというわけです。ちなみに、カードの契約情報の管理は個人単位で行われていますので、家族名義のカードには影響ありません。

自己破産の検討タイミングとは?

自己破産はいくら以上からできるという決まりはありませんので、借金額が数百万円でも数千万円でも可能です。自己破産検討タイミングは人それぞれではありますが、利息の支払いだけで精一杯であったり、借金の総額が年収よりも多かったり、複数の金融機関から借り入れをしている場合では、検討するタイミングかもしれません。

会社の社長が自己破産する理由とは?

倒産すれば、会社が返済できない分は社長個人が返済する義務を負いますので、会社の社長が自己破産する一番の理由は、個人保証が原因となっています。

会社社長の自己破産後の生活はどうなる?

社長の自己破産後の生活

続いて、会社社長の自己破産後の生活について見ていきましょう。

自己破産後社長は退任する必要がある?

株式会社の社長が自己破産した場合には、辞任しなければならなくなります。これは、株式会社と取締役の関係は委任契約であり、委任について当事者の一方が破産したときには、終了するとされているからです。ただし、自己破産以外の債務整理の場合は終了事由ではありませんので、必ずしも退任する必要はありません。
では、合同会社や合名会社、合資会社といった持分会社の場合はどうか?という点ですが、これは定款の定めに従うことになります。

自己破産後に同じ会社の社長に復帰することは可能?

自己破産で退任した場合でも、法的には復帰することは可能です。ただし、社長として復帰するためには、再任の手続きを改めて行う必要があります。上場していない家族経営のような会社であれば、定款の定め方によって退任してすぐに株主総会を行い、再任決議をすることも可能です。上場企業の場合には、株主総会を簡単には開けませんし退任後再任するいきさつの説明、準備もありますので、難しくなります。

自己破産後は会社を作ることは可能か?

自己破産後であっても会社を再び作り、社長として再起を図ることは可能です。以前は商法で破産者は取締役になれないという規定がありましたが、現在は規定が廃止されています。

自己破産経験者が社長の会社は融資を受けられるか?

融資を受ける際には、経営者個人の信用情報をチェックするのが一般的であるため、事故情報が残っている場合には融資は期待できません。ただし、資金調達方法は金融機関だけではありませんし、自己資金が少なくても可能な事業は多くありますので、会社経営ができないわけではありません。

自己破産後の社長は再就職可能?

自己破産を経験した元社長であっても、再就職における制限はありませんので、就職に関する心配はありません。また、自己破産したことが再就職先に知られても、自己破産を理由に解雇することはできません。

法人破産をしても必ずしも社長が自己破産するわけではない

会社の負債の連帯保証を社長がしていない場合で、且つ個人の債務もなければ法人破産しても、社長は自己破産する必要はありません。ただし、会社の債務(金融機関からの借り入れやリース会社との契約など)は社長が連帯保証していることがほとんどであるため、基本的には法人破産と自己破産はセットと考えられています。

自己破産しても社長としてのチャレンジ可能

法人破産を検討していてもその決心ができない方の中には、取引先や保証人に迷惑がかけられないという理由で、無理な資金調達をしながら会社を延命するケースがあります。新たな借り入れにより、V字回復すればいいですが、もちろんそのまま倒産ということもあり得ます。つまり、無理な資金調達をして決断が遅くなるほど、連鎖倒産などにつながり被害を大きくしてしまうことがあるのです。

お伝えした通り、自己破産をしても再度起業をすることは可能です。早い段階で法人破産するのであれば、弁済の上でそこまで被害が大きくならず、再起業した際に再び取引ができるかもしれません。

法人破産や自己破産で全てが終わるとは考えず、その後も生活が続いていくことを考え判断行動できると良いでしょう。

まとめ:自己破産後の生活はどう変わる?誤解多き破産の真実に迫る!

いかがでしたか?今回の内容としては、

  • 自己破産には同時廃止事件と管財事件がある
  • 自己破産は誤解が多いが再スタートを切るためには有効な制度
  • 自己破産後の生活変化は多様だが全く生活がなりたたなくなるものではない
  • 自己破産後も社長は起業することもできるので再起は可能

という点が大切なポイントでした。ある程度の制限はあるものの、自己破産後も生活が可能であるとお分かりいただけたことでしょう。特に経営不振の中で自己破産について調べている方は、なるべく早い段階であらゆる手段を考えていかなければなりません。

今回は自己破産がテーマでしたが、倒産・自己破産という道を選ばずとも再起を目指す方法はありますので、他の記事もご覧になっていただけますと幸いです。

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