エステサロンが倒産する時の対応は、他の業種と比べて特殊性があります。それはエステのサービス提供の仕組みによるものなのですが、倒産手続きを行う前に必要な準備や対策を行うのを忘れないようにしてください。
本記事では、エステが倒産する時の対応や、顧客保護のためにできる事などを解説していきます。
なぜエステの倒産は特殊なのか?
エステはサービスを期間や回数で販売することが一般的です。
都度払いのプランを利用している人はそのエステが倒産してもマイナスはありませんが、「〇回分回数券」という購入の仕方をしている人は、コースの途中でエステが倒産すると残り回数分のお金が無駄になってしまいます。
会社や事業が破産すると、財産を回収して債権者に配当します。配当の割合は内容や金額などによって様々ですが、基本的にすべての債権者は平等に扱われます。
しかし、元々会社に充分な資金がない中での倒産ですので、支払ったお金が全額戻ることは期待できないでしょう。
同様の特性を持つ業種
エステと同様の特性を持つ業種として、
- 脱毛サロン
- 塾(英会話教室など)
- 結婚相談所
- 家庭教師派遣
などがあります。
これらのコースを長期契約することが前提のサービスを「特定継続的役務」と呼びます。
このようなサービスを利用していた場合、会社が破産した時は管財人に債権者届を出して配当を待ちます。
ただし、倒産する時に財産が余剰にあることは少ないので、先ほどご説明したように回収が難しいとされているのです。
他に税金や従業員への給与支払いなどに問題があれば、法律上そちらが優先されてしまいます。
プランを購入した顧客への対策を講じておこう
そうはいっても、利用する消費者の財産を守ることは大切です。自分たちのサービスに価値があると判断してお金を払っているので、できることは事前に準備しておきましょう。
保全措置
エステなどでコース契約をする際には、契約時にそのコースの全額を支払うことが一般的であり、そのお金のことを前受金と呼びます。
契約したサロン等がコース途中で倒産してしまった場合に、未消化の回数分の料金を返還する「前受金保全装置」という制度があります。
前受金保全装置を利用している場合は、契約書にその内容を具体的に明記しなければなりません。
前受金保全装置は、前受け金のうち一定の金額を別で保管して倒産などで返還を求められたときのために取っておくというもの。
ただし、事業展開のためには売上が必要ということもあり、この制度を用いている会社はそれほど多くありません。
申立てをする前に準備しておくこと
破産申立てをする前にしておきたいことについてご紹介いたします。
新規受付の停止
事業停止することが分かっているにも関わらず新規客から前受金を受け取るのは、計画倒産としてトラブルに問われる可能性も高いのでやめましょう。
過去に、破産申し立てが決定した後に前受金を支払わせて詐欺罪に問われた例もあります。
カード払いストップの説明
クレジットカードでコースの料金を分割で支払っている場合、信販会社への支払いをお客さん側で拒否できます。支払い停止を申請すれば残額の支払いを止められるので、きちんとその旨を伝えましょう。
まとめ:エステの倒産は他の業種にはない特殊さがある
エステは長期でサービスを行うことが前提のため、記事中でも触れたように他のサービス業とは違った対策が必要です。
また、エステサロンだけでなく英会話教室などの塾や結婚相談所なども、破産の際にはお客さんに迷惑がかかってしまうことが考えられますので、そうならないためにも健全な運営を目指しましょう。
お客さん側としては、複数回分の料金を現金やカードを使い一括で支払うのではなく、分割にすれば倒産時のローン支払いを停止することができる可能性があることを、覚えておきましょう。