民事再生は再建型の債務整理手続きの1種で、事業を継続しながら再生を目指す方法です。経営者が続投できる点が大きなメリットで、実際に数多くの企業が民事再生手続きを行い、立て直しに成功してきました。
今回は、民事再生法の特徴や適用後の人事、実例に至るまで広く紹介していきます。
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民事再生法の基礎知識について
まずは、民事再生法とはどのような法律かについて見ていきましょう。民事再生は債務超過などで事実上倒産状態にある会社の、債務整理手続きの1種になります。債務を返済可能な範囲に整理し、事業は継続していくことで会社を立て直すことを目的としています。
民事再生法は法人格に関わらず利用でき、個人事業主の方も適用できます。
- 自力再生
- スポンサー援助
- 事業譲渡
という3つの内のいずれかの方法で立て直しが行われますが、自力で立て直しを図る場合は、細かい部分まで徹底した財務管理、事業が収益を上げられるかが判断されます。
会社更生法との違いについて
民事再生法と同じく、再建型の債務整理手続きとして「会社更生法」があります。どちらも裁判所に申立を行い、立て直しのための計画を作成して承認を得て実行するのですが、会社更生法が適用できるのは株式会社のみで、特に大規模な企業が利用することが多い制度です。
同じ航空業界でも日本航空は会社更生法を利用しましたが、格安航空のスカイマークは過去に民事再生法の手続きを行っています。民事再生法と会社更生法は、対象となる法人格以外にも以下のような違いがあります。
株式の扱い
会社更生法が適用されれば、それ以前に発行された株式の価値はほぼなくなります。申立を行い、会社更生法が適用されると整理ポストに株が移動し、1ヵ月間は取引することが可能です。しかし、基本的に値段はほぼつきません。
会社更生法を申請する会社は減資を行い、結果として株主は地位を喪失することになります。そのため、株主は株式を保有している会社の動向をチェックしておく必要があります。
経営陣
会社更生法を適用すると、原則それまでの経営陣は退任します。その後経営権は更生管財人に譲渡されるのですが、
- 裁判所が選出する
- 金融機関等の了承を得た旧経営陣
のうちどちらかが務めます。民事再生法では基本的に経営陣の続投が可能ですが、裁判所が選んだ管理委員の指導を受けることが条件となります。
民事再生適用後の従業員の扱いは?
民事再生法を適用した際、経営陣は退任する必要がないことは先ほど説明した通りです。では、従業員の扱いはどうなるのでしょうか?
会社立て直しのために、従業員を残す場合と人員整理を行う場合の2パターンが考えられます。民事再生法で解雇された場合は、会社都合の解雇となるのですぐに失業保険を受け取れますし、退職金制度がある会社であれば退職金を受け取ることができます。
ただ、事業譲渡で清算型の民事再生を選んだ場合は、元の会社は清算されなくなるので、基本的に全員解雇されます。解雇通知は30日前までに行う義務があり、それ以降に通知した場合は解雇予告手当が別途発生します。
民事再生法で会社を立て直したケース
大手菓子メーカーの東ハトは、2003年に多角化経営の失敗のあおりを受け債務超過状態になり、民事再生法を申請しました。菓子事業は好調だったものの、通信事業・自動車学校・ゴルフ場経営などが不振となったため、コアとなる菓子事業を新会社に譲渡し名称も引継がれました。
その後、再生は3年間で完了し山崎製パンの子会社となりました。当時立て直しを任された辺見 芳弘氏は、菓子部門に専念してユニークな商品を開発することでニッチなニーズを狙い、業績回復に貢献しています。
まとめ:民事再生法で会社を立て直した例!会社更生法との違い
民事再生法は、膨れ上がった債務を整理しながらも事業自体は継続できる手続きです。経営陣もそのまま残せるという会社更生法にはない面も、経営者の方にとっては大きなメリットだと言えるでしょう。
記事中で紹介した東ハトをはじめ、ライカやキムラヤなど有名な企業も民事再生法を適用して会社を立て直しています。