2020.12.21

自己破産でも原状回復費用は支払う?原状回復費用の扱いと敷金の清算

土地や建物などの不動産を借りていて自己破産した場合、原状回復費用はどのような扱いになるのでしょうか?原状回復費用の負担についても気になるところです。

ここでは、破産手続きでの原状回復費用の扱いや費用負担の問題、敷金や違約金についても解説していきます。

自己破産における原状回復費用の扱い

不動産を借りている場合、借り手は契約の終了痔に原状回復してから返還しなければなりません。原状回復には費用がかかりますが、自己破産しても原状回復費用は負担しなければならないのでしょうか?

賃貸契約が自己破産手続き開始前に終わっている場合

借り手に原状回復を求める権利を原状回復請求権といいますが、自己破産における扱いは対象となる不動産の賃貸契約が、自己破産手続き開始の前後どちらで終了したかによって扱いが変わります。まずは、自己破産手続き開始前に契約が終わっているケースから確認しましょう。

自己破産手続き開始前に賃貸契約が終わっている場合、この時点ですでに原状回復が必要な状態になっているため、原状回復請求権が発生していると考えます。原状回復工事が済んでいるかどうかには関係なく破産債権に含まれることになります。

原状回復は借り手からすれば支払う費用が発生しますが、目的は原状回復という金銭ではないものです。そのため評価額を破産債権として計上することになります。

具体的には、すでに原状回復工事が終わっている場合は実際にかかった費用、まだという場合にはかかると見込まれる金額です。原状回復費用は実際よりも多く見積もることなども多いため、適正な金額であるか破産管財人が調査したり検討したりする点が特徴的でしょう。

結論としては、自己破産手続き開始前に発生した原状回復請求権は、破産債権に含まれます。そのため、破産の申し立てが認められれば借り手は支払免除となり、結果として貸し手が負担すると考えられます。

賃貸契約が自己破産手続き後に終わった場合

賃貸契約は、破産手続きを開始した後でも継続していることが少なくありません。個人の住居で支払いも問題なく継続している場合は破産債権とは別とし、破産手続き後も自由資産から賃料を支払って、契約を継続するのも可能です。当然ながら原状回復請求権も発生しません。

法人は、破産手続きの中で破産管財人によって賃貸契約が解除されます。その際に発生する原状回復請求権は、破産手続きの中で最優先して弁済される債権「財団債権」とするのが多いですが、一般的な債権と同じ破産債権とする判例もあり、定かではありません。

財団債権として扱う場合の原状回復は、原資となる破産財団に必要な金額があれば破産管財人が破産財団を使用して原状回復工事をおこない、原資が不十分である場合は原状回復しないまま引き渡して、破産手続き後の資金が用意できた段階で原状回復費用を支払うことになります。

一方で破産債権とした扱う場合は、他の債権と同様に配当の支払いとなるため、貸し手は原状回復費用を全額回収するのは困難といえるでしょう。

自己破産の手続きで気になる敷金・違約金の扱いと明け渡し

原状回復費用の他にも、敷金や違約金などの扱いが気になるところです。自己破産での敷金や違約金などの扱いはどうなるのでしょうか?

自己破産手続き開始後の敷金の清算

自己破産の手続き開始後に賃貸契約が解除となれば、敷金の清算も必要です。貸し手は破産管財人に敷金を返すことになりますが、次のケースではどのような扱いになるのでしょうか。

  1. 未払いの家賃がある
  2. 貸し手が原状回復工事を代行した
  3. 敷金を充てて原状回復工事はしたが、費用が不足した

未払いの家賃がある場合は、敷金から差し引き残額のみが返還されることになります。原状回復工事を代わりに済ませていた場合も借り手に支払う義務があるため、やはり敷金から差し引いて清算します。③のように敷金を充当しても費用が不足した場合には、貸し手は破産管財人に請求できます。

請求された不足分の費用の扱いは、通常の原状回復費用と同じ扱いになるため、財団債権か破産債権のどちらかに含まれることになります。

自己破産手続きにおける賃貸契約の違約金の扱い

賃貸契約は、中途解約や契約解除の事前予告などの条項を定めて違約金を設けていることがあります。このような条項や、違約金の自己破産における扱い、解釈はさまざまです。

ただし、自己破産手続きの中で破産管財人が契約解除したことが、貸し手に損害を与えたと判断された場合は、破産債権とすることで債権者としての権利の行使、つまり配当を受け取れます。

明け渡しと放置した荷物の撤去費用

破産手続きをするような場合は、引っ越し費用が捻出できないなどの理由で賃貸契約が解除となっても、荷物を放置したままというケースもあるでしょう。貸し手は、これらの撤去費用を請求でき、破産手続きでは財団債権に含まれます。

まとめ:自己破産でも原状回復費用は支払う?原状回復費用の扱いと敷金の清算

自己破産手続きでの原状回復費用の扱いは、破産手続き開始時期とのタイミングが関係しているということを、お分かりいただけたかと思います。

自己破産における債務の免責については、免責されるものとされないものがありますので、なるべく早い段階で弁護士に相談すると悩みも軽減されるでしょう。

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