破産という言葉は知っていても、債権者破産という言葉を聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか?
債権者破産は、債権者が債務者(借りている側)の破産手続きを、申し立てするという変わった仕組みです。
「なぜわざわざ債権者が損をするようなことを自分でするのだろうか…?」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では債権者破産の解説や、債権者破産をすることでどのようなメリットがあるのか?について紹介していきます。
Contents
債権者破産は特殊なケース
債務整理として破産をするには、裁判所に申し立てをしなければなりません。
実は、破産法 第18条を見てみると申し立てができるのは「債権者または債務者は破産手続き開始の申し立てをすることができる」と記載されているのです。
第2項では、「債権者が破産手続きの申し立てをするときは、有している債権の存在および破産手続き開始の原因となる事実を疎明しなければならない」つまりきちんと理由があれば債権者側が、債務者の破産を申し立てしてもよいとされているのです。
しかし、自分たちが貸した債務が免責される破産手続きは、債権者側に得があるようには思えませんよね。
実際、債権者が破産申し立てを行うケースは自己破産と比較すると1/100以下ほどの件数だそうです。
自治体が行ったケース
2019年には、徳島市が公益社団法人徳島市観光協会に対して、債権者破産を行ったことが話題となりました。
なぜ自治体が観光協会に対して債権者破産申し立てを行ったかというと、観光協会は金融機関から多額の借り入れを行っており、徳島市が金融機関との損失補償契約を結んでいたのです。
徳島市側は観光協会に対して複数回累積赤字解消のための協議の場を設けたものの、観光協会側は全て欠席。
徳島市は早期解決のために調査をした所、事業継続しつつ累積赤字を解消することは困難だろうと判断。そして、観光協会側も清算手続きをとる意志がないと回答したため、債権者破産申立に踏み切りました。
同年10月には破産手続きが完了し、徳島市は3億2,700万円の配当を回収したものの5,300万円は未回収のまま免責となりました。
債権者破産と自己破産の違いについて
債務者が自分で破産申し立てをすることと、債権者破産をすることの違いは、
- 予納金の支払い
- 債務者の債務超過や支払い能力についての疎明
が挙げられます。
破産手続きでは裁判所へ予納金を支払いますが、予納金の支払いは申し立てを行った人が支払うことになっています。
つまり、債権者破産申立をした場合は、債権者が予納金を支払わなければなりません。また、債権者が申し立てを気軽にできてしまっては危険があります。
そのため申し立て時には原因を明らかにして裁判所に提示しなければいけないのです。資料として、契約書・手形・小切手・帳簿書類・請求書などが疎明に用いられますが、債務者側から協力がなければ厳しくなります。
債権者が破産申し立てをすることのメリットには何があるのか?
債権者が破産申立をするのは珍しい例だと紹介しましたが、メリットが完全にないわけではありません。
- 強制執行ができない時に債務者の財産状況を調査してくれる
- 不良債権を損金として計上できる(直接償却)
- 違法行為の阻止
などが債権者破産申し立ての利点です。
ただし、しっかりとした証拠やデータがなければ、債権者が損をしてしまう結果も十分考えられます。
まとめ:債権者破産とはどのような制度?概要からメリットまで解説!
今回は、債権者破産の申し立てについて解説しました。少々意外でしたが、法律上債務者の支払い能力について疎明できれば、破産申し立ては可能です。
ただ、予納金支払いや配当可能な財産がないなどの理由で、損失が大きくなる可能性もあります。手続きも通常より煩雑になるため、他の選択肢も視野にいれながら検討されるのがよいでしょう。