債務・債権には時効が設けられており、時効を迎えると消滅してしまうのですが、特別清算を行うと時効はどのような扱いになるのでしょうか。
この記事では、債務・債権の時効と特別清算との関係について解説していきます。
債権の時効について
まずは、債務・債権の時効の基本的な扱いについてお伝えしていきます。最後の返済や弁済期から一定期間経つと、時効が成立して権利消滅しますが、場合によってその期間が異なりますのでそれについても見ていきましょう。
原則5年とされていた商取引の債務・債権の時効が廃止となり、民法改正により民法が適用されることになりました。ただ、改正されてから日が浅いため取引が行われたタイミングやケースによっては旧法が適用されることもあります。
以下の内容で、時効の期限が定められています。
生産者・卸売・小売商人代金
- 弁済期から10年
- 債権者が権利行使可能と知ってから5年
工事・設計士への報酬
- 弁済期から10年
- 債権者が権利行使可能と知ってから5年
弁護士・公証人報酬
- 事件終了から10年
- 債権者が権利行使可能と知ってから5年
労働基準法上の賃金請求権
就業規則で決められた支払い日から5年
(令和2年に改正され、しばらくは3年として扱われる)
切手や手形に関する権利は従来の法律から変更がありません。
手形引受人への請求
満期日から:3年間
小切手・手形の再遡求権
受戻日(または訴えを受けた時から):6ヶ月間
時効の停止とはどのような制度のことか?
債権には時効だけでなく、「時効の停止」という暫定措置も存在します。時効の停止とは、時効成立が間近となった時に債務者へ催告を行うと時効が6ヶ月間猶予されるものです。
たとえば、時効まで1ヵ月となった場合に、債権者が債務者へ内容証明郵便等で催告した時点から、半年間時効は成立しません。
ただし、時効の停止は暫定処置であるため、その6ヶ月以内に訴訟などの法的手続きに進まないといけません。
時効の中断との違いについて
時効の停止と似ている言葉として、「時効の中断」がありますが意味は異なります。
これは、時効の期間中に、中断事由として認められるアクションを起こすことを指します。
たとえば、5年の時効と定められている取引があったとして、3年目で訴訟すると、判決あるいは和解がされた時から、5年間が時効と考えられます。
時効の停止は進行している時効を一時停止するための制度であり、時効の中断は新たに起算点を作ることでそれまでの時効を無効にする、という違いがあります。
- 訴訟
- 和解成立
- 調停成立
- 債務者の承認
- 仮処分
- 仮差押え
- 差し押さえ
- 請求
などを行うと時効の中断が可能です。
特別清算と時効について
特別清算をする前にあった債権をまとめて「協定債権」と呼び、これは債権者との同意を得て、削減される対象となる債権です。
しかし、
- 租税公課・労働債権
- 清算人報酬
- 特別清算によって生まれた費用
などは当然協定債権には含まれません。
会社は2ヶ月の弁済禁止期間以外であれば、上記の債権者への返済を行えます。(弁済禁止期間では裁判所の許可が必要)
そして、会社法515条3項により、協定債権は特別清算終結の登記がされた日(または特別清算開始取り消しの登記)から2ヶ月間経過しないと時効は完成しません。
まとめ:特別清算手続をすると時効の扱いはどうなるのか?
債権の時効に関しては、内容や項目によって規定が異なります。本文で紹介したように、法改正によりルール自体が変わることもありますし、改正後しばらくは暫定的な時効が適用されるケースもあります。
特別清算を行う際は、破産などとは違った扱いがされるので、弁護士などに相談の上ご確認ください。