再生型M&Aの第二会社方式には、メリットの多さから用いられることのある手法です。しかし、デメリットも存在します。デメリットは事前に対応し、実行にあたって生じるリスクにも備える必要があるでしょう。
ここでは、第二会社方式のデメリットとリスクについて詳しく解説していきます。
第二会社方式における4つのデメリット
第二会社方式には4つのデメリットがあるとよくいわれます。しかし、すべてのデメリットが当てはまるとは限らず、事前に対策できるものもあります。
許認可の再取得に時間やコストがかかる
第二会社方式で転移した事業を再開する際、営業上で必要な許認可があれば再取得する必要があります。再取得には時間とコストがかかり、再取得まで営業できない空白の期間ができてしまいます。
税負担が増える
第二会社方式で会社を設立したり不動産を転移したりすると、登録免許税や不動産取得税が課せられて税負担が増えます。そのため、財源を確保する必要があります。
資金の調達が困難
第二会社方式で事業を継続するには会社の新設など当面の資金が必要ですが、経営が悪化している中で自社に余裕はないでしょう。しかし金融機関からの融資も困難な状況です。どのように資金を調達するかは、第二会社方式実施の重要なポイントになると考えられます。
事業譲渡と会社分割の選択が難しい
第二会社方式の問題点としてよくいわれるのが、事業譲渡と会社分割のどちらの手法で実行するかの判断が難しいことです。煩雑な手続きもあるため、少しでも負担がないようにと考えたいところですが、税負担や債権者の意向、スポンサーの有無など、さまざまな事柄を考慮しなくてはなりません。
第二会社方式の実行には、専門的な知識や専門家のアドバイスが必要になることは多いため、事業譲渡と会社分割の判断も専門家を交えて検討するのが望ましいでしょう。
第二会社方式のリスク
第二会社方式にはリスクもあり、対応を間違えると第二会社方式での企業再生が無効になってしまいます。どのようなリスクがあるか把握し、第二会社方式の実行をより効果的にする選択が大切になります。
許認可が再取得できない
デメリットでも触れたように、営業再開に必要な許認可は事業を移した会社で再取得しなければなりませんが、そもそも許認可を再取得できる確約はありません。万が一にも取得できなければ、見込んでいた収益も上げられないため第二会社方式を実行した前提すべてが狂うことになります。
このリスクに対しては解決策がありました。中小企業庁が推進する第二会社方式の認定を受けることです。「中小企業承継事業再生計画」いわゆる新第二会社方式のことで、元の会社で取得した許認可を継承できるため再取得の必要がなくなります。さらに税負担の軽減や金融支援が受けられるなど、先に挙げたデメリットの解決にも役立つ制度です。
ところが、中小企業承継事業再生計画の認定制度は、平成30年3月末で受付を終了しています。現在では、産業競争力強化法を活用し、産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受けることで、税制優遇や金融支援等の支援措置を講じるという選択肢があります。
このような税制優遇などについて知りたい場合には、産活法に規定される公的機関である、中小企業再生支援協議会に相談することをお勧めします。
まとめ:第二会社方式のデメリットとリスクとは?~備えと対策のために~
第二会社方式は企業再生の有効な手段ですが、実行にあたってデメリットもあります。対策できるものは実行前に備える必要があるでしょう。また、どのように第二会社方式を実行するかで税負担や手続き、リスクも変わってきます。
最善の選択には、さまざまなケースを想定して検討する必要があるでしょう。
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