法人・個人に関係なく、債務整理などの手続きを弁護士などに依頼すれば受任通知を債権者に送るのが通常です。
ところが、法人破産では受任通知を送らない弁護士が多くいます。受任通知は法人破産では不要なのでしょうか?
ここでは、法人・個人の破産(債務整理)の手続きにおける受任通知の役割の違いや影響力について解説します。
法人と個人の破産(債務整理)手続きでの受任通知のメリットとデメリット
受任通知は、弁護士などが依頼人の代理人となり交渉などの窓口になったことを債権者などに通知するものですが、ただ連絡事項として伝える以上の効力を持っています。
まずは、受任通知のメリットやデメリットを法人・個人それぞれのケースから考えることで、受任通知の法人破産における必要性を考えてみましょう。
個人の自己破産(債務整理)における受任通知のメリット
個人の自己破産で受任通知を送るメリットは、取り立てや督促を停止できることです。一般的な金融機関や貸金業者に限られますが、他の業種でも大抵は同様の対応をしてくれます。また、返済のプレッシャーから解放し、今後の返済や生活の立て直しのために準備する時間ができます。
同時に、返済も一時的に停止します。返済がない間に弁護士費用などの準備をしなければなりませんが、経済的にも少しは楽になるでしょう。
法人破産における受任通知のメリット
法人破産におけるメリットも同じく取り立ての停止です。ただし、個人の債務整理と違って取り立てを禁止する法律はありません。多くの場合は、受任通知の送付によって取り立てを停止してくれますが、法の規定がないため、債権者の裁量によるところが大きいといえます。
法人破産の場合は会社そのものがなくなることが多いため、法人破産の手続きのための時間を確保できるといった部分が大きいでしょう。
個人の自己破産(債務整理)における受任通知のデメリット
受任通知によって督促が止まるのは債務者本人のみです。そのため、連帯保証人がついている場合には、連帯保証人へ請求がいくことがあります。また、住宅ローンなど銀行からの借入があると口座が凍結される可能性もあります。
銀行口座の凍結はあらかじめ預金を引き出し、給与の振り込み先や公共料金の引き落としなどになっている場合は他行へ変更する手続きをしておけば、とくにデメリットにはなりません。
連帯保証人も必ずついているわけではないため、個人の自己破産における受任通知の送付はメリットのほうが大きいといえるでしょう。
法人破産における受任通知のデメリット
「受任通知で督促が止まる」とメリットで述べましたが法的な規制はなく、また法人破産は個人破産よりも債務額が大きくなるため、受任通知を受け取ると回収に動き出す債権者が少なくありません。
その方法はさまざまで、訴訟を起こすこともあれば、なかには社内の機材を差し押さえにくるところもあるといいます。
また、債権者ではなかったとしても取引先企業への影響も懸念されます。物品の供給や技術の提供など、他で代替できなければ取引先の経営も傾きかねず、株価などに影響することもあるでしょう。
このような状況では、破産申し立ての準備にも支障が出る恐れがあり、従業員にもマイナスに影響します。
「会社が存続しないのならば別にいいのでは」と考える方もいるかもしれませんが、債務とは別に支払うべき弁護士費用や社員の退職金などの捻出も難しくなります。そのため、受任通知の送付はデメリットが大きいと判断するケースもあるようです。
まとめ:法人破産で受任通知は不要?法人と個人での受任通知の役割の違いを解説
法人破産と個人の自己破産とでは受任通知の役割や効果は異なり、法人破産では必ずしも受任通知の送付がメリットになるとは限りません。
法律で督促を禁止していないことから、社内の機材を差し押さえるなどの強硬手段に出る債権者もいます。業種や規模など、状況に応じた判断が必要になるため、法人破産に詳しい弁護士など、専門家に相談することをおすすめします。