破産を申し立てる際、債務者の方は少しでも手元にお金を残したいと考えてしまうかもしれません。
しかし、不正に財産を隠したり悪質性の高い詐欺破産罪に該当する行為を行った場合は、起訴されることもあります。
刑事起訴を逃れても、厳しい対処をされる可能性がありますので、悪意がなくても怪しい行動はとらないよう気を付けましょう。
この記事では、
- 財産隠し等の不正行為をするとどうなるか
- 詐欺破産罪には時効はあるのか
上記について解説していきます。
財産隠しが見つかったら破産は認められない
財産隠しとは、破産時手続きをする際に自分の財産を没収されないよう隠すこと、過少に申告することを指します。換価対象となる財産は、個人と法人で扱いが異なります。
個人の自己破産の場合、
- 99万円以上の現金
- 預貯金
- 不動産
- 自動車
- 持ち家
- 保険
などが換価対象として扱われます。法人破産では自由財産は適用されませんので、基本的に会社名義の財産は全て換価対象となり管財人に回収されます。ただ、法人の債務は経営者が個人保証していて、経営者個人も自己破産をするケースも多いです。
裁判所は不正がないか、口座や財産、保険の名義に不備はないかを徹底的に調べます。
財産隠しの例として、
- 現金を自宅や他の場所に保管する
- 申立前に財産の名義を家族の名前にしておく
- 通帳は全て提出しない
などがあります。申立書類や、面談、管財人に送られてくる郵便物などで細かく調査されます。
民事では免責可事由となる
財産隠しが判明した場合、対処法の多くは民事上での責任追及が行われます。破産法252条で財産隠しは、免責不許可事由と判断され債務は免責できなくなります。
免責が許可されないということは、借金や返済義務はそのまま残るので自分で返済を続けなければなりません。
悪質な行為と判断されれば刑事告訴も
財産隠しや損壊行為が悪質だと判断されれば、刑事告発の対象となり刑事上の責任が問われる可能性もあります。破産法第265条の詐欺破産罪では、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科せられるとされています。
詐欺破産罪とされるのは、財産隠しだけではありません。財産を不当に安く譲渡したり、債権者の配当を減らす目的で借金を増やすなどの行為も該当します。
破産時の不正行為の時効は?
詐欺破産罪においての時効には2通りの権利行使があり、ケースによりどちらかが使われます。
詐害行為取消権
詐害行為取消権の行使(民法424条)とは、債務者が行った不正な行為の取り消しを請求できる権利で、債権者が裁判所に申立をします。詐害行為取消権の時効は、不正行為が行われたことを「知った」時点から2年、行為自体が行われてから10年と定められています。
否認権
否認権の行使(破産法176条)も詐害行為取消権と同様に、自己破産前に債務者が名義変更や譲渡をしていた財産に対してその行為を取り消す権利です。ただし、否認権の場合は行使できるのは破産管財人と決められています。
否認権の時効は、破産手続き開始から2年間、または名義変更等不正を行ってから10年間とされます。
まとめ:財産隠しや詐欺破産罪には時効はある?
財産隠しや、詐欺破産罪に当たる行為は立派な犯罪です。悪質な不正行為だと判断されると、免責不許可どころではない事態に発展する恐れがあります。
しかし、破産手続きを前に「少しでも財産を多く残したい」と考えるのは当然だと言えます。そのような時は不正行為をするのではなく破産以外の債務整理手続きができるか、自由財産として認められる財産はあるかについて、専門家に早めに相談することをおすすめします。