固定予算とは、製造間接費予算を一定の操業度に基づいて算定するものを言います。
そして、予算達成のために計画した予算と実績の差を分析することは重要で、この分析のことを差異分析と言います。
本記事では、固定予算による差異分析について具体的に説明します。
予算差異・操業度差異について
「予算差異」とは、製造間接費を浪費、または節約したことによって発生するものです。
「操業度差異」とは、操業度の減少、または操業度の拡大等の理由によって、実際操業度が基準操業度を下回ったり上回ったりした際に生じた、製造間接費の超過のことを指します。
身近な例で解説
上記の説明を分かりやすくするために、予算差異と操業度差異を身近な例で説明しましょう。
<個室代を割り勘>
たとえば、友人10人で食事会をするとして、個室代の5000円を割り勘にした場合、1人あたりの個室代は500円になります。
個室代は人数に関係なくかかるものなので、個室代金は「固定費」にあたります。
<飲食代を割り勘>
飲食代は事前の用意として、1人あたり3000円と予想し、10人分の飲食代の予算額は30000円となります。10人参加するという予定ですが、実際の人数は変わることがあるので、30000円は変動費にあたります。
個室代と飲食代を合わせると、個室代(固定費)500円+飲食代(変動費)3000円で、1人あたり3500円になります。
原価計算にあてはめてみると?
これを原価計算にあてはめると、
参加人数(10人)→基準操業度
1人当たりの飲食代(3,000円)→変動費率
飲食代予算(30,000円)→変動費予算額
個室代予算(5,000円)→固定費予算額
1人当たり個室代(500円)→固定費率
1人当たり予算(3,500円)→予定配賦率
となります。
この食事会の実際の参加者が5人だった場合、1人当たりの個室代は1000円(5,000円÷5人)と、負担が大きくなります。
参加を予定していた友人10人に、個室代(固定費)を配分(配賦)することができなかったために差異が生まれ、これを「操業度差異」と言います。
つまり、「実際操業度(実際の参加者数)が、基準操業度(予定の参加者数)を下回ったために固定費(個室代)の配賦不足が生じた」となるのです
実際の参加者数5人の場合、1人あたりの飲食代が3,000円で個室代は5,000円のため、実際の会計予算は20,000円になります。この実際の参加者数(実際操業度)に基づく予算額を、「予算許容額」と言います。
食事会が終わり会計をしてみると、お店からの請求額は22,000円でした。当初の予想額20,000円を上回っています。
個室代は予算額と実際額が同じため、この予想額 20,000円 (予算許容額)と実際の請求額22,000円(実際発生額)の差異は、1人当たりの飲食代が予想を上回ったために生じたものでした。このことを「予算差異」といいます。
固定予算と公式変動予算について
続いて固定予算と公式変動予算について見ていきましょう。
固定予算
固定予算は、公式変動予算のように製造間接費予算額を変動費と固定費に分類せず、全ての製造間接費を操業度に関わらず一定(固定費)と考える方法です。
予算額が固定されているため、簡易的な分析になります。固定予算における予算許容額は製造間接費予算額と同じ額になります。
公式変動予算
一方、公式変動予算は、製造間接費の予算を設定するにあたり、変動製造間接費予算と固定製造間接費予算を別々に設定します。
基準操業度の予算額のように予算額が変動し、詳しい分析をすることができるのです。
いずれの方式でも、原価差異の総額や、能率差異は一致します。
両者の異なる点は「予算許容額」です。公式変動予算と固定予算では予算許容額のみが異なりますが、その結果、予算差異と操業度差異の金額もそれぞれ異なってきます。
まとめ:差異分析について解説!予算差異と操業度差異を理解しよう!
製造間接費の予算額を考えるにあたり、変動費と固定費に分類せず、全ての製造間接費を一定(固定費)と考えるのが固定予算であり、変動製造間接費予算と、固定製造間接費予算を別々に設定するのが公式変動予算です。
差異分析は予算管理において重要なポイントです。当初の予算から離れることのないよう定期的にじっくり分析し、経営改善につなげましょう。