従業員が残業代や賃金などのトラブルを解決したいと考えた場合、まず確認するべき書類が雇用契約書です。
しかし、いざ確認しようとした際に「雇用契約書をもらっていない…」という方もいるのではないでしょうか?これはつまり会社側が「雇用契約書を渡していない」点が問題となります。
ここで経営者の方が疑問に思うのが、「雇用契約書がないのは違法ではないのか」「会社側に罰則はないのか」などではないでしょうか。
そこで本記事では、雇用契約書についての基礎知識から、交付されていない場合に予想されるトラブルについて詳しく解説していきます。
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雇用契約書は採用の際に書面で交付するようにしよう
雇用契約書という名前から、雇用する場合には必ず交わさなければならない書類だと感じるかもしれませんが、そうではありません。
労働契約法第4条第2項に、「労働契約内容について、できる限り書面により確認するものとする」と記されています。
雇用契約書の交付が義務だと記されているわけではないため、雇用契約書を作成しなくても違法ではないのです。
しかし、雇用契約書がなく、さらに労働条件の明示がない場合には違法となります。労働基準法第15条第1項で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金や労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。
万が一労働条件を明示していない場合、労働基準法違反となり30万円以下の罰金が科せられてしまいますので注意しましょう。
予想されるトラブルは未払い残業代だけではない?考えられるトラブルについて
雇用契約書や労働条件通知書がない場合、起こり得るトラブルは未払い残業代などの賃金トラブルだけではなく、「労働時間に関するトラブル」「休日に関するトラブル」「解雇をめぐるトラブル」など、さまざまなトラブルが考えられます。
会社側が従業員へ給料を支払わないなどのトラブルもありますが、従業員側が計算を間違えていたり、勘違いしていたりする可能性も考えられます。
その際、証拠となる雇用契約書や労働条件通知書があれば、そのようなトラブルを未然に防げますので、交付しておきましょう。
雇用契約書がない場合の未払い給料請求について
雇用契約書がなくても雇用状態であれば、雇用される前に必ず給料や待遇などの労働条件について確認し、合意しているはずです。労働契約は口頭でも成立し、当初取り決めた内容を経営者や従業員が、勝手に変更することはできません。
雇用契約書がなくても請求可能
雇用契約書は、未払い給料を請求する上で雇用の有無を証明する重要な証拠となりますが、書面で雇用契約書を交わしていないという事例は意外と多くあります。
この重要な証拠となる雇用契約書の書面がないと、未払い給料を請求することはできないのか?と考える方もいると思いますが、契約書がなくても請求することは可能です。
もし、雇用契約書を交付していない従業員から未払い給料を請求され、「あなたを雇ったことはない」と伝えても、労働の成果や証人といった他の証拠で証明できます。
このように、雇用契約書の有無に関わらず未払い給料は請求されますので、経営者は覚えておきましょう。
まとめ:雇用契約書などの書類まわりと未払い給料に関して
雇用契約書の交付は義務付けられていないため、交付していなくても違法とはなりません。
しかし、労働条件を明示していないと違法となってしまい、30万円以下の罰金が科せられます。
従業員とのトラブルを避けるためや法律違反とならないためにも、従業員を採用する際には雇用契約書を交付しておきましょう。