2020.10.2

自己破産手続きの流れと期間!気になる費用も解説!

「事前に自己破産手続きの流れを知っておきたい…」
「自己破産手続きはどれぐらいの期間がかかるのだろう…」
自己破産は滅多に触れる機会がないため、いざ自己破産を検討し始めると分からないことが多く出てくることでしょう。

基本的な情報である「自己破産手続きの流れ」や「自己破産にかかる期間や費用」なども知らない方が多いのではないでしょうか?

そこで今回は、自己破産手続きにかかる流れ・期間・費用について詳しく解説していきます。

自己破産手続きとは?

自己破産手続きとは、財産や収入が不足し、借金返済の見込みのない方が債務を免除してもらうための手続きです。

この債務免除のことを免責と呼びますが、自己破産申請をすれば必ず免責となるわけではなく、免責不許可事由が破産申請者にあれば、原則として自己破産をすることはできません。

自己破産手続きの種類

自己破産手続きには、同時廃止事件・管財事件・少額管財事件の3種類があります。まずは、それぞれについて見ていきましょう。

同時廃止事件

債権者に弁済するほどの財産がない場合に、破産手続きの開始と同時に破産事件が廃止されることをいいます。

換価処分する財産がないことが明らかであれば破産管財人が選任されませんので、手続きも簡易的であり要する期間も短くなります。個人の自己破産の多くは同時廃止事件で終了しますが、法人破産の場合に同時廃止事件が選ばれることはごく稀で、ほとんどありません。

同時廃止事件は裁判所に行く(免責尋問手続き)回数は原則1回で済みますし、この免責尋問手続き自体も、弁護士が代理人になっている場合には、時間もかからず終了します。

管財事件

管財事件では裁判所から選任された破産管財人が、申立人に財産がないかを調査した上で、財産を換価処分して債権者の弁済に充てます。

少額管財事件

少額管財事件は、管財事件における負担を軽減することを目的とした手続きで、申立人の財産が一定額以下で免責不許可事由がないような場合に行われます。少額管財事件のためには、弁護士が代理人としてつく必要があります。

自己破産は弁護士に依頼せずとも自分で申し立てることは可能ですが、その場合にはこの少額管財事件の手続きや即日面接制度などを利用することは出来ません。

自己破産手続きにかかる期間はどれぐらい?

自己破産手続きに要する期間は、手続きの内容によっても大きく異なりますが、3ヶ月程度で済むケースもあれば、1年程度かかる場合もあります。手続きごとに自己破産にかかる期間について見ていきましょう。

同時廃止事件にかかる期間

同時廃止事件は破産管財人も選任されず、破産手続きの開始と同時に終了するという仕組みになっているので、自己破産手続きにかかる期間は3カ月~4カ月程度で終了します。

少額管財事件にかかる期間

少額管財事件は、同時廃止事件と比べると必要となる手続きが増えますので、手続きにかかる期間は6カ月程度を要します。

管財事件にかかる期間

通常管財事件の場合、裁判所に破産申し立てを行った後に破産尋問で裁判官との面談を経て、破産管財人が選任されます。

通常管財事件では債権者集会を開き、破産者の財産や負債の調査や換価回収を行う必要がありますし、債権者の人数によっても長期化するため、手続きにかかる期間は6カ月~1年程度を要します。

<自己破産手続きにかかる期間まとめ>

自己破産手続きにかかる期間(目安)
同時廃止事件3~4ヶ月程度
管財事件6~12ヶ月程度
少額管財事件6ヶ月程度

自己破産手続きにかかる期間を短くする方法とは?

長い期間がかかってしまう自己破産手続きを、スムーズに進めていくためのポイントについて見ていきましょう。

書類を迅速に集める

最も重要な点としては、必要書類を正確かつ迅速に集めることです。給与明細や源泉徴収票、銀行口座の利用履歴、保険や自動車、不動産に関する資料など、自己破産の申し立てに必要となる書類を速やかに集め、内容などに不備のないようしっかりと確認も行ってください。

自己破産には数多くの書類が必要となるため、これらをスムーズに用意できるかどうかで要する期間は異なってきます。

即日面接

東京地方裁判所や横浜地方裁判所では、破産事件の早期処理を目的として即日面接という方法があります。これは、弁護士が代理人として自己破産申し立てを行った場合に、裁判官が弁護士と面接をするだけで破産手続き開始決定を判断するものです。

即日面接では、申し立てから3日以内に破産尋問を行い、短期間で自己破産を終結させます。即日面接当日の午後5時には開始決定が出されることになるため、手続きの期間を短縮させることができます。

自己破産手続きにかかる期間が長くなるケースとは?

続いて、自己破産手続きにかかる期間が長くなるケースについて見ていきましょう。

書類集めに時間がかかる

自己破産の期間が長引いてしまう原因としてまず挙げられるのが、書類集めに時間を要してしまうことです。

自己破産をするために求められる書類は数が多いですし、住民票を発行や給与明細の用意などは、自分のペースだけで取得することはできません。弁護士に指示を仰ぎながら必要書類をリストアップし、一枚一枚準備していくことが必要になってきます。

債権者が多い

債権者が多かったり負債額が多額であったり、財産の換価が多い管財事件の場合には、その分手続きに時間がかかってしまいます。

債権者の同意が得られない

自己破産では、免責について債権者から意見を出されてしまうことがあります。多くの貸金業者は免責に対して反対を出しませんが、一般個人の債権者がいる場合には、その利益を守るために反論が繰り返されてしまうことがあるのです。

さらに、めったにありませんが免責決定後であっても即時抗告という不服申し立てをされて、期間が長引くこともあります。

即時抗告では、高等裁判所に対して行うことになりますが、高等裁判所にて免責許可決定が覆されることは稀です。

自己破産手続きの流れとは?

自己破産の大まかな流れとしては、以下のようになります。

  1. 弁護士への相談→依頼
  2. 債権者への受任通知
  3. 自己破産申立の書類準備
  4. 破産審尋→破産手続き
  5. 破産管財人との面談
  6. 破産管財人による換価と債権調査
  7. 免責審尋→免責許可の決定

    では、1つずつどのような手続きを行うのか詳しく見ていきましょう。

自己破産手続きの流れ1:弁護士への相談→依頼

まずは、弁護士や司法書士といった自己破産の専門家に相談してください。インターネットなどで債務整理に強い弁護士を探して、相談をした上で破産手続きの依頼を行います。

自身で手続きを行うことも可能ですが、法律が絡むのでスムーズに手続きを進めるためには、弁護士への依頼は必須と考えましょう。

自己破産手続きの流れ2:債権者への受任通知

依頼を受けた弁護士は、債権者に対して「受任通知」を行います。

受任通知とは「自己破産手続きの依頼を受けた」ことを債権者に伝える手続きで、法的拘束力もあるため、債権者はこの時点で取り立てや請求ができなくなります。

自己破産手続きの流れ3:自己破産申立の書類準備

次に、自己破産を裁判所に申し立てるための下記書類を準備していきます。

  • 破産手続開始・免責申立書
  • 陳述書
  • 財産目録
  • 債権者一覧表
  • 委任状
  • 住民票
  • 預貯金通帳の写し
  • 給与明細
  • 源泉徴収票
  • 賃貸借契約書

財産の有無により提出に必要な書類が異なり、車検証や登記簿謄、査定書、保険証書などが人によっては必要になってきます。

自己破産の書類準備はかなり複雑で大変な作業になるため、弁護士に任せながら提示された資料を揃えていくといいでしょう。

自己破産手続きの流れ4:破産審尋→破産手続き

自己破産の申し立てを行うと、裁判所での「破産審尋」が行われます。借金の内容や自己破産までの経緯など事情を説明し、問題がなければ破産手続きが開始されます。

めぼしい財産がない場合には、同時廃止事件として破産手続開始決定と同時廃止決定が裁判所から出され、免責尋問期日が決定します。免責尋問を経て免責許可決定が下りれば終了です。

管財事件の場合は、破産管財人が選任され次の項目に続きます。

自己破産手続きの流れ5:破産管財人との面談

破産手続きの進行を協議するため、破産者・弁護士(破産者が依頼)・破産管財人らが集まり打ち合わせが実施されます。

そこでは、破産者の財産を破産管財人に引き継がせる方法や、免責不許可事由がある場合に詳細な聴き取りを行います。

自己破産手続きの流れ6:破産管財人による換価と債権調査

裁判所から選任された破産管財人が破産者の資産を換価処分し、債権額に応じて公平に分配します。定期的に債権者集会を行い、債権者に対して情報を提供します。申立人はこの債権者集会には出席しなければなりません。

自己破産手続きの流れ7:免責審尋→免責許可の決定

次に、債務を免責にするための「免責審尋」が行われます。こちらは基本的に形式的な確認のみで済み、これに通過すると免責許可が下りて借金の返済義務がなくなります。

以上が自己破産の基本的な流れになります。

自己破産の手続きにはどのくらい費用がかかる?

自己破産の手続きにはどのくらいの費用がかかる?

自己破産手続きに必要となる費用は以下のようになっています。

<予納金>
申立手数料(収入印紙):破産を申し立てる際の手数料
官報公告費:官報に掲載して公告するための費用
予納郵便代:債権者に対して申立人が破産した旨などを郵送で通知するための費用
引継ぎ予納金:申立人から破産管財人に破産事件を引き継ぐ費用

<破産者が依頼する弁護士費用>
弁護士費用:破産者の代理人となる費用

予納金とは、自己破産手続きを行う際に裁判所に対して支払うお金で、破産の種別によって金額が異なります。

同時廃止事件の場合は、官報掲載費や収入印紙切手など含めて合計2万円程度かかります。

少額管財事件の場合には、裁判所に20万円程度の予納金を納める必要があります。

通常管財事件になった際の予納金の基準(東京地方裁判所)は下記の通りになります。

<個人-通常管財事件の自己破産>

負債額が5000万円未満50万円
負債額が5000万円~1億円未満80万円
負債額が1億円~5億円未満150万円
負債額が5億円~10億円未満250万円
負債額が10億円~50億円未満400万円
負債額が50億円~100億円未満500万円
負債額が100億円以上700万円

<法人-通常管財事件の自己破産>

負債額が5000万円未満70万円
負債額が5000万~1億円未満100万円
負債額が1億円~5億円未満200万円
負債額が5億円~10億円未満300万円
負債額が10億円~50億円未満400万円
負債額が50億円~100億円未満500万円
負債額が100億円~250億円未満700万円
負債額が250億円~500億円未満800万円

以上からわかるように、自己破産の種類によって予納金の額は異なり、同時廃止事件の場合には、明らかに負担が少ないことがわかります。

もし、予納金の支払いが困難な場合には、裁判所に相談して引継ぎ予納金を分割払いにしてもらったり、法テラスを利用して予納金を立て替えてもらったりする方法をとることができます。

弁護士費用について

弁護士費用は事務所により金額が異なりますが、同時廃止事件の場合20万円~50万円程度、管財事件の場合には50万円~80万円程度になります。

破産の規模によっては100万円以上かかる可能性もありますが、債権者が多かったり負債額が多かったりする場合ですので、このようなケースは稀です。

破産後に自己破産による制限を受ける期間

自己破産の手続き中や、自己破産後はいくつかの制限を受けることになります。続いて、それら制限を受ける期間について見ていきましょう。

資格制限の期間

自己破産手続きの開始決定により、一定の資格は制限されてしまい、その仕事に従事している場合には、手続き期間中仕事を続けることはできません。

弁護士、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士、弁理士といった士業は資格制限の対象になります。また、生命保険募集人や警備員など他人の財産を預かり管理する一定の職業は制限されます。

一般的に自己破産の申し立てから4~8カ月程度が制限を受ける期間と言われ、免責許可の確定により復権します。

信用情報機関に事故情報が登録される期間

クレジットカードの申し込みを受けると、クレジットカード会社は提携している信用情報機関に申込者の信用情報を確認します。

確認の結果、申込者の信用情報に破産した事実(事故情報)などが登録されていると、返済能力がないと判断されてクレジットカードは作れなくなります。

事故情報の影響は、クレジットカードの申し込みに限ったことではなく、ローンなどの信用情報機関と提携しているサービスの利用も難しくなることを意味します。つまり、現金で買えるものであれば問題ありませんが、ローンを組んで購入することの多い、家や車の購入には信用情報機関の事故情報が絡んでくるということです。

信用情報の事故情報が消滅されれば、クレジットカードの作成やローンは組やすくなります。その事故情報の消滅期間は、ICC5年、CIC5年、KSC10年であるため、「5年~10年が事故情報の登録されている期間」また、「破産後クレジットカードが作れるようになる期間」などと言われています。

再度自己破産ができるまでの期間

自己破産後にまた自己破産ができることを認めてしまうと、再び自己破産をすればいいという考えから借金を重ねてしまう恐れがありますし、実際に自己破産すれば、債権者に対して再び不利益を課します。

ですので、前回の免責が確定した日から7年以内の申し立ては、免責不許可事由に該当し、原則として再度自己破産ができません。

言い換えれば、7年経過すれば、2回目の自己破産が可能ということです。しかし、7年経過すれば必ず免責を受けられるということではなく、2回目の自己破産では免責を認めても再度繰り返してしまう可能性がありますので、そう判断されてしまえば免責されないこともあります。

ただし、原則として7年間が免責不許可事由に該当するものの、免責を認めることが相当である特別な事情と裁判所に判断されれば、裁量免責として免責が認められることがあります。

官報への掲載期間

自己破産をすると官報と呼ばれる政府の機関紙に掲載されることになり、これは消えることはありません。ただし、官報に掲載されても無料で閲覧できる期間が30日であるため、周りに知られることはまずないでしょう。

一時期、ウェブサイト上に簡単に破産者の氏名などにアクセスできてしまうサイト(破産者マップ)が登場したこともありました。しかしすぐに閉鎖されましたので、この経緯からしても誰もが簡単に破産者への情報にアクセスできるようになることはないでしょう。

自己破産はどのような弁護士に依頼すべきか?

自己破産を依頼する弁護士は誰でもいいわけではありません。ここまでご覧いただいてお分かりになる通り、自己破産では複数の書類を用意して法律が絡んだ手続きを行っていく必要があります。そして、これらをスムーズに進め、手続きにかかる期間を短くするためには、代理人となる弁護士の経験がものを言います。

弁護士と一口に言っても得意とするものが違いますので、依頼する場合にはホームページなどから情報を比較し、債務整理の経験が豊富な弁護士を選びましょう。

まとめ:自己破産手続きの流れと期間!気になる費用も解説!

今回の内容で大切なポイントを下記にまとめます。

  • 自己破産手続きには同時廃止事件、管財事件、少額管財事件がある
  • 自己破産手続きの費用は自己破産の手続きには予納金と弁護士費用が必要
  • 自己破産手続きにかかる期間は3カ月~1年程度で以下の通り
自己破産手続きにかかる期間(目安)
同時廃止事件3~4ヶ月程度
管財事件6~12ヶ月程度
少額管財事件6ヶ月程度

自己破産を検討する際は、具体的な手続きの流れや要する期間、必要な費用を頭に入れた上で行うようにしましょう。

弁護士と相談しながら書類を準備することが、自己破産手続きにかかる期間を短くする上で大切です。

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