自己破産と離婚は必ずしもセットではありませんが、生活を送る以上経済状態と婚姻関係は深く関わることもあるでしょう。
どちらも重要なことですので、そのタイミングは慎重に考えるべきでしょう。
この記事では、
- 破産時の離婚の必要性
- 離婚と破産のタイミング
- 手続きを始める前に考えておくべきリスク
について解説していきます。
破産時の離婚はケースバイケース
自己破産を行うほど、事業の影響がご家庭に及んだ場合はまず離婚を考えた方がいいのでしょうか?
自己破産について詳しくない方は、もしかすると「夫か妻が自己破産をしたら、配偶者にも影響が及ぶ」というイメージがあるのかもしれません。
しかし、原則として破産を行うに当たって財産を回収されるのは申し立てをした本人に限ります。たとえご家族であっても本人以外が取得した財産は取り上げられません。
具体的に言うと、経営者であった夫が破産した場合換価処分対象となるのは夫名義の家・車・土地・高級時計・解約返戻金がある保険などです。妻が個人の資産で購入した財産や預貯金は守られます。
家族が連帯保証人になっている場合は返済義務が生まれる
家族が連帯保証人であった場合には、その人にも返済義務があります。
たとえば妻が連帯保証人であれば代わりに返済するか、妻も自己破産をするかを選ばなければなりません。
当然連帯保証人の義務は離婚しても変わることはありませんので、どちらのケースにしても「本人同士が離婚したいかどうか」が重要になります。これは通常の離婚でも同じですね。
自己破産は法定離婚事由ではないため、片方が離婚を拒否すれば調停か離婚裁判に進む可能性もあります。
破産と離婚はどちらを先にした方がいい?
離婚と自己破産のどちらを先にするかで、気を付けたいポイントは変わります。
それぞれのケースに分けて見ていきましょう。
破産→離婚の場合
自己破産をしてから離婚する方が一般的にはいいとされます。端的に「法的手続きが片付いてから離婚した方が面倒ではない」というのが主な理由ですが、財産を回収された後のことですので慰謝料獲得が厳しい場合もあります。
また、お子さんがいる場合、養育費に関しては免責の対象になりません。破産法253条1項4号に基づき、自己破産によって債務の免責を受けたあとでも養育費の支払い義務は生じるのです。
当人同士で養育費の支払いについて理解が得られない場合は、減額などを求めて家庭裁判所に調停を立てることもあります。
離婚→破産の場合
逆に離婚をしてから自己破産した場合は、財産分与に注意すべきです。一般的な財産分与の相場は、共有財産の1/2ですがこれよりも大きい額に当たる財産分与を行うと破産手続きを目前にした財産隠しと判断される可能性があります。
受け取った財産を返還しなければならなかったり、故意性が強いと判断されれば最悪の場合詐欺罪に問われたりする可能性があります。
また、夫婦で口座を貸し借りするといったことも行わないでください。例えば、夫の報酬を妻の口座で管理する…というような場合も注意が必要です。
慰謝料の支払いが終了してから破産申立てをしたとしても、期間がそれほど空いていなかったり、本人の財政にふさわしくないと判断されれば、否認権行使(贈与などがなかったとされ換価処分できる)の対象になるかもしれません。
まとめ:破産と離婚はタイミングを慎重に考えよう
配偶者が自己破産をしたからと言って、離婚は絶対条件ではありません。ただ、ご家庭の経済的な理由やその他の事由によって離婚を選ばれるご夫婦もいらっしゃるかと思います。
本記事でご紹介したポイントを踏まえて、タイミングや分与する共有財産についてよく話し合ってください。