2020.10.22

「会社都合のリストラ」と助成金の関係に注意!

経営者がリストラを検討する理由にはさまざまあるとは思いますが、背景に厳しい経営状況があり、大きなストレスを抱えているに違いありません。

しかし、そんなときだからこそ冷静にならなければ、助成金の返還という思わぬ事態を招いてしまう可能性があります。

そこで今回は、リストラで見落としがちな助成金関係と、注意したい「会社都合退職」と「自己都合退職」の手続きについて解説していきます。

リストラを決断する前に…確認したい助成金の申請

リストラを検討する際は、「リストラの影響や効果」「リストラする人選の基準」など考えることは多く、直接的なものでなければ見落としてしまうこともあるでしょう。その1つが冒頭で触れた助成金です。

助成金の中にはリストラと密接な関係のものがあるため、リストラの決定も注意しなければなりません。

ポイントは雇用関係の助成金

リストラは人員削減ですので、雇用に関する助成金の利用を申請している、または申請を検討している場合に関係してきます。

具体的には、トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金、キャリアアップ補助金などが該当します。

これは厚生労働省が管轄するもので、新規雇用や従業員の教育などの支援を目的とします。そのため、リストラする会社とは方向性が相反するわけです。

これら助成金の多くは支給条件の1つとして「6ヶ月内に会社都合退職していないこと」を挙げています。助成金を申請中、またはすでに受けている会社がリストラをすれば返還しなければならない可能性が高く、助成金の利用を検討していた会社は当分の間は申請できなくなります。

リストラと助成金のどちらかを選ぶ

「助成金を申請しているなかでリストラを検討しなければならない…」そのような事態になった場合にできるのは、リストラをそのまま決行して助成金をあきらめる(もしくは返還する)か、リストラの時期をずらして助成金が支給されるのを待つか、このどちらかを選ぶことだけです。

すでに申請していて支給されてしまったならリストラしても関係ないのでは、と考える方もいるかもしれませんが、悪意がなかったとしても発覚した場合に、詐欺行為として疑われかねません。

リストラで起こる「会社都合」と「自己都合」の問題

リストラと助成金の関係がわかったところで、次に確認しておきたいのがリストラの手続きで起こる助成金に関係するトラブルです。

「会社都合退職」を避けるための不正行為

リストラは通常、「会社都合の退職」として処理します。

「会社都合」か「自己都合」であるかは厚生労働省がさまざまなパターンを想定してどちらに該当するのか示しており、個人的な感覚で決めることはできません。

なぜ離職理由にこだわるかというと、離職理由によって失業保険での待遇が大きく変わるからです。

しかしリストラする会社の中には、「会社都合」か「自己都合」であるかを自社の都合に合わせて処理しようとするところがあります。

なぜなら、先ほど紹介した「助成金の申請や支給」をあきらめずにリストラを決行したいと考えているのです。

助成金をもらうために本来「会社都合退職」であるところを「自己都合退職」にする行為は当然ながら認められておらず、従業員に「自己都合退職」を強要すればリストラハラスメントに該当します。

善意からの行動が会社を苦境に立たせることも

「会社都合」と「自己都合」のどちらで処理されるかは、退職する従業員にとっても受給額が大きく変わるため大きな問題です。

失業保険は「会社都合」であれば支給開始も早いですが、「自己都合」なら3か月以上の待機期間があります。もちろん、失職する従業員はできるだけ早い給付を望むでしょう。

「自己都合」で失職する従業員の中には、早く失業保険をもらうために「希望退職」にできないかと打診してくる人もいるかと思います。ここで「生活が大変なのだろう」と善意から「希望退職」で処理してしまった場合、「会社都合」となり助成金が受けられなくなります。

リストラとは直接関係はないかもしれませんが、どのような理由であれ、真実と異なる手続きはのちに大きな問題を生む可能性があることを、念頭においておきましょう。

利用する制度を正しく理解して正当な手続きを

これらの問題は、経営者がリストラや助成金に関する制度を早い段階で正しく理解していれば起きなかった可能性があります。

また、各部門との連携も密であれば早々に気づけたかもしれません。

利用している制度や利用を検討している制度は、隅々まで正しく理解し、普段から従業員にも周知しておくことが大切です。

まとめ:「会社都合のリストラ」と助成金の関係に注意!

リストラを検討する際は、リストラの内容だけでなく影響を及ぼすものすべてに目を向けておく必要があるでしょう。

とくに「会社都合退職」を「自己都合退職」に強要するようなことなどあってはいけません。

助成金がなければ苦しい状態であるならば、助成金よりも審査の早い、政府が出資する日本政策金融公庫から借り入れる案も検討してみてはいかがでしょうか。

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