事業を続けるうえで取引先は協力関係にあるといえるため、できれば健全な経営状態であるのが望ましいところです。しかし、ときには債務整理をする取引先も出てきます。
売掛金などの費用の回収が済んでいなければ、債権者として受任通知が送られてくることもあるでしょう。
今回は、債権者になったときに備えて知っておきたい受任通知の効果や対応策について解説していきます。
受任通知の基本とその効果
そもそも受任通知がどのようなものであるかご存じでない方もいることでしょう。まずは受任通知の基本的な知識から確認したいと思います。
債務整理の手続きで送られてくる受任通知
受任通知とは、その名の通り「任を受けたことの通知」で、債務整理の代理人として依頼を受けたことを示しています。
債務者が弁護士などに債務整理の手続きを依頼し契約に至ったため、今後の交渉は送付者(弁護士など)を通して欲しいという通知です。そのため、債務者本人ではなく、弁護士や法律事務所などが送付します。
通常は債務者が契約した直後に送られてくるため、受任通知の送付によって債務整理の手続きが始まるといえます。
受任通知の内容
受任通知は弁護士や法律事務所から送られてくるため、仰々しいものをイメージしがちですが、記載内容はとてもシンプルです。送り主が債務整理を受けたことと、本件に関する窓口であること、債務者の氏名や住所などが記載されています。また、受任通知と同時に取引履歴の開示を求められるのが一般的です。
このように記載内容は特別なものではありませんが、受任通知には大きな効力があります。
受任通知の効果①支払いがストップする
債権者になった際に影響が大きい受任通知の効果は、支払いが止まることでしょう。手続きの中で支払うべき債務の総額や債務整理の方法などが決まるまでは、債務者からの支払いが止まってしまいます。これは、債権者としてはとても困る問題です。
ただし、法的に関係あるのは一般的な金融機関や貸金業者で、他の業種であれば本来は支払ってもらえる立場にあります。しかし一般的には、他の業種であっても金融機関と同様の対応をするのが通例です。
受任通知の効果②督促ができなくなる
債務者からの支払いが滞りがちであった場合は、何度も請求したことがあるのではないでしょうか?受任通知が届けば、延滞があったとしても請求や督促ができなくなります。やはり金融機関などが法で禁止されている行為ですが、こちらについても多くの事業者は同じように督促を止めているのが現状です。
一般の企業や経営者が債権者になった場合、債務者からスムーズに回収できないと事業の存続に影響する事態も出てきます。
通例とはいえ、本音では少しでも早く、多く返済して欲しいと思うところでしょう。しかし債務整理の方法が自己再生や自己破産となった場合には、大幅に少なくなったり、全く回収できなくなったりする可能性が高くなります。
受任通知が届いてからでも可能な回収の手段とは?
債権者になった場合、受任通知の効力はとても大きなものですが、事業の存続がかかるとなれば少しでも回収の可能性を高めたいところです。
貸金業者などでなければ、本来は直接督促をかけることも問題ありませんが、実は他にも有効な手段があります。
裁判所に申立て訴訟を起こす
任意整理であれば、弁護士などの代理人を通じて和解という流れになり、少しずつでも回収できる可能性があります。一方の自己再生や自己破綻などの債務整理では回収が困難な見通しのため、訴訟を起こすのが効果的です。
裁判でこちらの訴えが認められれば、給与や預貯金などの差し押さえもできるため、ある程度は回収が可能になるでしょう。ただし、債務者の債務整理の手続きが完了していないことが前提です。
訴訟を起こす際は、迅速な決断と行動が求められます。
連帯保証人に請求する
売掛金としての債務で連帯保証人はいないでしょうが、経営者としてのつながりで個人的に貸し付けているならば、連帯保証人をつけている可能性はあります。
受任通知の送付で督促できなくなるのは本人だけのため、連帯保証人への請求は問題ありません。
ただし、他の債権者も同じように連帯保証人に請求する可能性があるため、やはり迅速に対応するのが望ましいでしょう。
まとめ:受任通知で督促ができない!?債権者が知るべき受任通知の効果とは
会社を経営していると、債権者の立場になってしまうことがあります。
中には債務整理が必要になる事業者もいることでしょう。債務整理の手続きに入ったことを告げる受任通知を受け取れば、ただ代理人からの連絡を待つのではなく、受任通知の効力を理解したうえで迅速に対応することが求められます。