「役員」と「会社」との間で資産売買をするときには、さまざまな注意が必要です。
しかし、役員と会社間での資産売買をしたことがなければ気を付けるべき点について理解していないことでしょう。
そこで本記事では、会社と役員との間で資産をやり取りする場合の注意点と考え方について解説していきます。
役員と会社との間で資産を売買するときの考え方
会社と役員との間で不動産など資産の売買取引をするのであれば、適正価格でやり取りするのが原則です。
もし、時価と比べて大きな差のある金額で購入、販売したときにどのようなことになるのかを見ていきましょう。
役員が会社に資産を売却した場合
役員が会社に対して資産を売却した場合で、その価格が適正価格よりも高いのであればその差額は、役員への賞与とみなされます。
通常であれば、資産を購入した会社の帳簿では購入額を損金として計上することができますが、ここで生じた差額分については損金算入ができず、法人税にはねかえります。
また、資産を売却した役員側も適正価格より高く受け取った額は賞与とみなされ所得税が課せられます。
では、役員が会社に対して資産を売却した場合で、その価格が適正価格よりも低いとすればその対応はどうなるのでしょうか?
このパターンであれば、会社は適正な価格よりも安くその資産を得たということになりますので、差額は会社の受贈益とみなされ法人税が課せられます。
もし、適正価格の2分の1以下の価格で販売していたのであれば、売却した役員は時価で売却したのと同じ譲渡所得税が課せられます。
会社が役員に資産を売却した場合
続いて、会社から役員に資産を売却した場合についてみていきます。
会社が役員等に対して適正な価格よりも安く資産を売り渡したのであれば、本来の適正価格から実際に売却した金額を引いた差額は、購入した役員への賞与とみなされます。
従って売却した法人は、その分は損金算入ができませんし、購入した役員側は所得税がかかります。
会社と役員の間での資産の売買が賞与とみなされた場合の注意
先述したように、会社と役員の間で何らかの資産が適正価格からはかけ離れた価格で取引された場合には、役員については、その差額が賞与とみなされることがあります。
差額が賞与とみなされると、個人の給与所得扱いということですので、所得税だけでなく、健康保険・厚生年金といった社会保険や、雇用保険の対象となり注意が必要です。
社会保険等の本人負担分については、時間が経ってから改めて役員に請求するなどすると、回収が難しいことがありますので事前に必ず関係各所に確認をしておきましょう。
同族会社での資産取引で注意すべきこと
同族会社では、会社と役員との間で資産取引が珍しくありません。同族会社は、関係のある少数の人たちに支配され税金逃れなどの行為がおきやすいことから、「①行為または計算の否認」「②役員等の判定」「③特別税額」という特有の規定が設けられていますのでご注意ください。
三つのうち、今回の会社・役員間の資産売買に関係する①と②についてみていきます。
①行為または計算の否認
会社が役員に有利な条件で資産を売却した場合、売却額にかかわらず時価で取引したものとみなして課税されます。
②役員等の判定
役員が会社に資産を売却し、その価格が適正価格の2分の1以下であったなら、実際に取引した額ではなく時価価格の場合の所得税と住民税が課せられます。
反対に、時価よりも高い価格で役員が会社に資産を売却したのであれば、時価と比較してその差額分は賞与とみなされ所得税・住民税の対象となります。
まとめ:会社と役員間で資産売買を行うときのポイントと注意点
今回は、会社と役員の間で資産を売買したときの考え方と、注意すべきポイントについて紹介しました。
同族会社などで会社、役員間で資産を売買するときは何かしら便宜が図られ、お互いに有利な取引が成されることがあります。
しかしながら、その度合いが世間一般と照らし合わせて大きいとみなされると、課税対象となるなどの処置を取られます。
役員と会社が資産をやりとりするときは、考え方を理解した上で上手に対応する必要があります。