自己破産においては、債務者側の知識だけでなく権利についても理解しておく必要があります。
破産をすると債権者は債務の請求ができなくなってしまうため、債権者の権利が著しく制限されてしまいます。
それに対して「破産債権」という制度を設けることで、債権者の権利を守っているのです。
は「破産債権」について、詳しく解説していきます。
破産債権・破産債権者の違いとは?
破産法 第二条では、破産債権について以下のように記載されています。
破産法 第二条第5項
この法律において「破産債権」とは,破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第97条各号に掲げる債権を含む。)であって,財団債権に該当しないものをいう。
破産法 第二条第6項
この法律において「破産債権者」とは,破産債権を有する債権者をいう。
「財団債権」は、破産財団から弁済を受けることができる債権のことで、この財団債権に当てはまらない債権については「破産債権」と呼んでいます。そして、破産債権を有する債権者を「破産債権者」と呼びます。
ちなみに「破産財団」とは破産者が持つ財産の総体のことを言い、「弁済」は債務を弁償することを言います。
財団債権・破産債権の違い
破産債権は「財団債権に該当しないもの」という記載がありましたが、そもそも「破産債権」と「財団債権」には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
制度上の違いとしては、「財団債権」は破産手続きに関わらず随時弁済が受けられる優先的な債権なのに対して、「破産債権」は随時弁済ではなく破産手続きによる配当を受ける形になります。
それぞれの具体的な債権としては、以下のようなものが挙げられます。
【破産債権】
- 破産手続開始後の利息
- 破産手続開始後の不履行による損害賠償や違約金
- 破産手続開始後の延滞税、利子税、延滞金
- 加算税、加算金
- 罰金、科料、刑事訴訟費用
- 破産手続参加の費用
など。
【財団債権】
- 破産債権者の共同の利益のために行われる裁判費用
- 破産財団の管理・換価・配当にかかる費用の請求権
- 破産手続開始前に生じた租税等
- 事務管理または不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
- 破産者の従業員の給料
- 破産者の従業員が破産手続終了前に退職した場合の退職金
など。
また、【破産債権】には
- 財産上の請求権である
- 金銭的評価のできる債権
- 破産者に対する請求権
- 民事執行が可能な債権
- 破産手続開始前の原因に基づく債権
といった要件も含まれます。
ここで重要なポイントは、「財産上の請求権である」という点です。これは、金銭給付として満足に足る性質を持つ請求権という意味を持ちます。
破産債権は配当によって支払いを行うため、配当されても満足に足らない請求権は破産債権としてカウントされないのです。
債権を回収するためには
破産債権者が債権を回収するためには、「破産手続」を行わなければなりません。
裁判所に届出を提出し、破産債権を元に破産手続きに参加することで、債権者が持つ権利を行使することができます。
破産手続に参加し、配当を受け取ることで債権を回収していきます。
債務者は自己破産をしているため直接取り立てを行ったり、債権の請求を行ったりすることはできず、あくまで破産手続きに参加する中で債権を回収しなければなりません。
まとめ:破産債権と破産債権者の違いや財団債権と破産債権の違いを解説!
今回は、自己破産における破産債権について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
「財団債権」は、破産手続に関わらず随時弁済が受けられる優先的な債権で、「破産債権」は、随時弁済ではなく破産手続による配当を受ける債権であるということでした。
破産手続きにおける債権者の権利を守るための制度でもあるので、財団債権との違いや債権の回収方法について理解しておきましょう。