2020.11.24

受任通知の送付だけを依頼!?督促停止目的の受任通知の問題点とは

経営者・個人どちらであっても、債務整理をするというのは簡単に決められるものではないでしょう。ところが、安易な発想で法律事務所を訪れる人もいます。

今回は督促の停止を目的に、債務整理手続きの1つである「受任通知の送付を依頼する行為」について考えます。

「受任通知を送って欲しい」督促停止が目的の債務整理とは!?

督促の停止を目的とした受任通知送付とは一体どんなものなのでしょうか?まず確認してみましょう。

債務整理をする意思が明確でない

受任通知とは、債務者が弁護士などに債務整理を依頼した際に債権者当てに送られるもので、債権者は受任通知を受けると督促や取り立てを停止しなければなりません。債務者は督促が止まったことで落ち着いて債務整理に取り組めるようになります。

受任通知は本来、債務整理の手順の1つですが、債務整理する意思が明確ではないのに督促が止まるメリットを目当てに、弁護士などに手続きを依頼する人がいるといいます。

債務整理する意思が明確ではないため、依頼を請けて受任通知を送っても、債務整理の手続きは一向に進まないという困った状態に陥ります。

「受任通知を送って欲しい」と限定して依頼

法律事務所に相談する際に債務整理には触れず、ただ「受任通知を送って欲しい」と依頼する人もいるといいます。

受任通知だけを送るという依頼には困惑するでしょうが、相談者が債務整理の手順を知らなければ誤認している可能性もあります。すぐに断るわけにもいかず、法律事務所としては対応に苦慮するところでしょう。

督促停止目的の受任通知送付は違法!?

債務整理するかはっきりしないのに受任通知を送るのは、法的に問題にならないのでしょうか?次は2つの法律に着目して考えてみましょう。

督促停止の前提は債務の処理

貸金業法第21条の該当部分を簡単に要約すると、債務者が債務処理を弁護士などに依頼している場合は、督促はできないとの記載があります。

通常の債務処理で行われていることですが、この法律では債務者が債務処理することを前提にして督促を禁じています。

同じく要約すると、債権管理回収業に関する特別措置法第18号では、債権回収会社は債務者が債権整理の手続きを依頼などしている状況では、正当な利用がない限り督促できないとしています。

ここでも前提は、債権整理することです。

督促停止が目当ての受任通知の送付に関する記述はありませんが、債務整理をしようとする明確な意思がない状況では法に適しているとは言い難いのではないでしょうか?

督促停止だけが目的の債務整理は会社のマイナスイメージに

督促の停止を目的にした受任通知の送付は、本来の役割とは異なり、法的にも問題があるように思えます。とはいえ、債務者の心の内を正確に知ることはできないため、意図を隠し依頼すれば周囲にはわからないかもしれません。

しかし、他に問題はないのでしょうか?

債権者への影響

債権者の立場になってみましょう。債務整理は債務者の返済しようとする意志が感じられます。受任通知によって督促できなくなる期間は、債務返済の計画を立てるのに必要な時間のため督促を禁じているという面があるでしょう。

一方で、督促の停止だけを目的としている場合は、受任通知を送付した後の計画がありません。債権の回収もできず、かといって再請求もできないため、ただ待つしかありません。このような債務者が多ければ事業としても立ち行かなくなるでしょう。

会社や経営者に対してマイナスイメージが広がる

債権者の中には、取引先など、経営に直接関係する企業も含まれているかもしれません。督促を止めるために受任通知を利用したとなれば、その意図もいつか相手に伝わることになるでしょう。

ここで問題になるのが、会社や経営者に対する悪評で、会社のイメージダウンは必須です。督促が止まるのは精神的負担が大きく減りますが、会社を経営する上で最適の選択とはいえないでしょう。

まとめ:受任通知の送付だけを依頼!?督促停止目的の受任通知の問題点とは

債務の督促は精神的な負担が大きく、督促を止める手段があるならば利用したいと思うものかもしれません。

しかし、受任通知の送付は債務整理を前提としており、安易に利用すれば最終的には自社の大きな損失になる恐れもあります。

返済が厳しい状況であるならば、正規の手続きで再建を検討してはいかがでしょうか。

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