事業承継の問題や事業の拡大などの理由で、会社売却または事業譲渡が実行されることがあります。ここで気になるのは、売却後の株主の処遇やそれによってどのような影響があるのかということでしょう。
そこで今回は、会社売却や譲渡が株主に与える影響と、会社売却にあたって株主が考えておくべきことについて解説していきます。
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会社売却した場合に株主にどう影響するのか
株式会社の場合保有している株式の数がそのまま会社への影響力となっており、株式の量に応じて配当金が受けられます。また、株主は株主総会に参加する権利を有し、保有株数に比例して会社に対して支配力を発揮することができます。
なお、売却で株式を手放したのであれば手放した分の権利がなくなり、一部の株式を手元に残しているのであれば株式数に応じて配当金を受けることができ、また株主総会への参加権はそのまま残ります。
ただし、株式数が減少した分は議決権が減りますので、会社への影響力は小さくなります。
事業譲渡した場合の株主の処遇
事業譲渡によって経営権が移行した場合、譲渡した会社の株主は何かと影響を被ることが想定されますので、総資産の5分の1を超えて譲渡が行われるのであれば、株主総会を開かなければならないと定められています。
譲受会社についても、経営体制が変わることによる影響を鑑みて同様の対応がとられます。
事業譲渡に反対する譲受会社や譲渡会社の株主は、定められた期間内に限りそれぞれの会社に対して公正価格で株式の買取を求める権利を有していますので、会社側はその対応について考えておかねばなりません。
会社売却時に株主が行うべき手続き
続いて、会社を売却しようとするときの株主の手続きについて見ていきましょう。
まず、会社に対して株式譲渡の承認を請求します。
株主と会社の代表者が同じであれば、株主が自身で承認して手続きを進められるのでスムーズです。
次に株主総会を招集し、そこで株式の譲渡を承認します。
その後、買い手と株式譲渡契約書を締結し、このタイミングで会社に対しては株主名簿の書き換えを請求しましょう。株主名簿の書き換えとは株主の名義を売主から買い手に書き換える工程で、請求があれば会社はこれに応じなければなりません。
最後に、買い手側が株主名簿記載事項証明書の発行と交付を受けて、株主が移行したことを確認して手続きは完了します。
会社売却による株主のメリット・デメリット
株主の譲渡で会社を売却した場合、売主である株主にはいくつかのメリットがあります。
株式の譲渡で受け取る収益がそのひとつで、現金を受け取って今後の蓄えや別事業の資金とすることができ、加えて経営者としての負担から解放されます。
後継者の不足から廃業を考えていた場合などは、会社売却を使って事業承継ができることもメリットで、事業が継続されることで従業員の雇用が引き継がれます。
また、事業成長の側面から、買い手の会社の規模や技術を利用してビジネスが広がっていく可能性も魅力といえるでしょう。
会社売却のデメリットは、一定の期間は定められた地区内で譲渡したのと同じ事業が営めないという制限がある点などです。
会社の売却は、将来を見越した上でメリット・デメリットを考慮して行いましょう。
まとめ:会社売却や譲渡が株主に与える影響と株主が知っておくべきことについて
いかがでしたか?今回は、会社の売却や事業譲渡が行われた場合の株主の処遇や、それに伴うメリット・デメリットなどを解説しました。
会社売却は、事業承継問題の解消やビジネスを加速させるための方法として昨今、中小企業でも多くとられている方法で、自社の状況によってはメリットも十分にあるでしょう。
ただし、会社を売却すれば、株主は大きな影響を受けます。株主の利益を守るための決まりが設けられていますので、不服がある場合の対処法についても理解しておくと安心です。
会社売却の影響は、経済的・権利的な側面はもちろんですが、精神的なところにも少なからず波及します。総合的に未来をシミュレーションした上で、進めていくことをおすすめします。