会社や個人が自己破産を行えば借金がなくなる、というイメージをお持ちの方がほとんどだと思いますが、申請すれば必ず通るというものではなく、状況によっては刑罰の対象となってしまうこともあります。
自己破産はほとんどの方が経験されることではないので、恐らく犯罪となる事項まで経営者の方も知らないのではないでしょうか?
そこで本記事では、「会社の自己破産前にしてはいけないこと」や、「犯罪となり得ること」について解説していきます。
会社の自己破産!犯罪となる事項
債務や借金などを通常の方法で返済することが不可能となったときに、自己破産を選択して免責を受けることが認められています。
そもそも免責とは、会社や個人が裁判所に自己破産を申請してそれが認められると借金などがなくなるという処遇のことで、非常に大きな効力がある分、細かな制約が設けられており、制約を破ると免責が認められないだけでなく犯罪になることがあります。
自己破産に関する犯罪で最も多いとされるのは詐欺破産罪で、破産を申し立てた債務者が自己の財産を隠したり、損害を与えたりした場合に成立する罪をいいます。
具体的には、破産者となった人は借金から逃れるかわりに、自己の保有資産のうち生活に必要とされる額(99万円以下の現金)をのぞいては、差し出さなければならないとされています。
差し出された財産は破産管財人の元で処分されて債権者に配当されますが、それに従わずに自分の資産を隠して逃れようとしたのであれば、罪にあたるということです。
詐欺破産罪について深掘りして見ていきましょう。
詐欺破産罪とは
詐欺破産罪とされるのは、債権者を害する意図をもって次の行為が行われた場合です。
- 財産を隠匿・損壊する
- 財産の譲渡や、虚偽の借金
- 財産に意図的に手を加えて価値を減少させる
- 財産を不利益になるように処分する
破産申請をする人が保有する財産について、破産の前に隠してしまったり誰かに譲るなどした場合。または、財産にわざと傷をつけるなどして価値をなくしてしまうようなことをしたり、極端に安価な値段で売り渡したりするなどがあれば、詐欺破産罪に問われることがあります。
それを行った時期については、破産申請後であるか前であるかは関係なく、「自己破産しなければならない状況下」で行えば、詐欺破産罪とされる可能性があります。
例を言えば、すでに借金で首が回らない状態のときに、財産を誰かに譲り渡した場合などがあたります。これらの行為は、売り渡した相手についても、その意図を知っていたのであれば罪に問われる可能性があります。
詐欺破産罪が発覚した場合のリスク
詐欺破産罪が発覚した場合には、大きなリスクがあります。
まず一つ目は当然ですが、刑事事件になり有罪判決を下されることがあり、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、その併科が科せられて前科を背負うことになります。罰金については、自己破産の免責等の範囲には含まれませんので、いかなる場合も自力で支払わなければなりません。
もう一つのリスクは、詐欺破産罪が発覚すれば自己破産による免責が受けられない可能性が高くなり、負債はそのままになるという点です。また、詐欺破産罪となった財産の譲渡や処分などの取引は、多くの場合は無効となりますので譲り渡した相手の信用を失うことにもなるでしょう。
詐欺破産罪を働くことは、自己破産の免責が受けられないだけでなく大きなリスクを負うことになりますので、十分に理解して執り行いましょう。
会社が自己破産する前に注意すべき具体的なポイント
会社が自己破産を検討するのであれば、詐欺破産罪とならないよう注意しておくべきことがあります。
まず、法人や会社の財産は保全するよう努めましょう。
現金はもちろんですが、備品や在庫の商品、車などの資産を債権者や従業員の手に渡らないようしっかり確保してください。また自己判断で財産を動かすことなどないよう、手段を講じなければなりません。
もし、自己破産について弁護士など専門家に相談をしているのであれば、嘘をついたり隠蔽したりせず開示しておきます。
伝えなければバレないと思っていても、通帳の調査や郵便物から明らかになりますので、ご注意ください。
まとめ:会社の自己破産!破産前に財産を勝手に処分するのは犯罪になる?
いかがでしたか?今回は、会社の自己破産前に財産を処分した場合の犯罪について解説しました。
自己破産の免責は、個人や会社がどうしても借金などが返済できないときに受けられる大きな処遇ですが、今回紹介したように、効果が大きい分、不正をすれば罪に問われてしまいます。
自己破産を決めた場合は、不正やそれと疑われることがないよう、注意して行動することが求められるでしょう。