債務整理の際に、債務者を返済のプレッシャーから救ってくれるのが受任通知です。一方で、受任通知によって不利に働くこともあり、効果を十分に理解していないと任意整理の手続きに支障をきたすこともあります。
ここでは、受任通知の基本的な知識から任意整理の際に発揮する効果など、受任通知についてくわしく解説していきます。
任意整理などを検討している方は参考にしてみてください。
受任通知とは？受任通知の基礎知識
受任通知は、「介入通知」や「債務整理開始通知」と呼ばれることもありますが、債務整理の場面だけで使われるものではありません。さまざまな手続きで利用される受任通知の基本から確認してみましょう。
依頼した相手が出す代理人就任を知らせる通知
受任通知は、字のとおり「任を受けたこと」つまり「代理人に就任したこと」を知らせるものです。弁護士や司法書士などの専門家が依頼人から正式に依頼を受けた後に、関係者へと送付します。
流れとしては、まず依頼人と弁護士などの専門家が契約します。次に依頼内容に基づいて代理人の権利の範囲などを記載した委任状を交わし、委任状を受けたことで正式に代理人となった専門家が受任通知を送付するという形です。
受任通知で窓口は送付者に
受任通知は通常、代理人になったという知らせと同時に、「今後は依頼人に直接連絡はしないですべて代理人である自分を通してください」といった内容も記載しています。
これによって依頼人が煩わしい交渉から解放されるなどのメリットがあるため、契約直後に送付されることが多くなっています。
任意整理で発揮される受任通知の効果と注意点
一般的な手続きでも受任通知の送付は依頼人にメリットがあります。任意整理などの債務整理ではメリットはさらに大きくなり、受任通知が影響を及ぼす範囲も広がります。
受任通知の効果：督促が止まる
任意整理などの債務整理においては、受任通知を債権者に送ると督促や取り立てが止まります。金融機関や貸金業者などが法律で規制されているものです。
本来は他の業種の債権者に関してはとくに決まりはありませんが、同じように督促を止めるのが通例です。そのため、依頼人（債務者）は受任通知によって精神的負担を大幅に減少できます。
受任通知の効果：支払いが止まる
もう1つの大きなメリットが一時的な支払い（返済）の停止です。任意整理では払い過ぎた利息などを再計算して最終的に支払うべき金額を算出し、それを元に各債権者と今後の支払いについて交渉するため、一度支払いを止める必要があります。
依頼者は支払いが一時的に止まることで経済的な立て直しができ、またこの間に弁護士費用などの支払いもできるようになります。心の余裕も取り戻し、任意整理の手続きに集中できるでしょう。
受任通知の注意点：タイムラグ
受任通知は、内容証明郵便で送るのが一般的です。契約直後に発送しても、受任した日と債権者に受任が伝わるまでにタイムラグが生じます。当然ながら、その間の督促を止めることはできません。
しかし、通常は弁護士などに依頼した旨を伝えれば督促は止まります。督促が止まらない場合でも弁護士に伝えれば適切に処置してくれますので、安心して慌てずに対応しましょう。
受任通知の注意点：連帯保証人への請求
受任通知によって督促が止まる対象は、依頼者本人のみです。そのため、連帯保証人を付けている場合には連帯保証人へ請求する債権者もいます。
任意整理は自力返済を前提とした債務整理のため、連帯保証人に厳しい取り立てがいく可能性は低いですが、場合によっては連帯保証人も債務整理が必要になるケースもあることをおぼえておきましょう。
受任通知の注意点：銀行口座の凍結
銀行からの借入がある場合は、受任通知を送ると口座が凍結されることがあります。給与の振込先や公共料金などの引き落としに利用している口座だと生活に支障もあるでしょう。
受任通知が送付される前に、口座の変更などの手続きは済ませるようにしてください。
受任通知の注意点：訴訟は止められない
任意整理においての受任通知には、督促や支払いを止める効果はありますが、債権者が訴訟を起こしても止めることはできません。
ただし、仮に訴訟となっても任意整理では債権者との交渉が前提にあります。特別な事情がない限りは、交渉を重ねることで和解に持ち込めるため、冷静に対処するのがいいでしょう。
受任通知の注意点：信用情報（ブラックリスト）の登録
債務整理をする上で覚悟しなければならないのが、信用情報の登録です。一般的にはブラックリストと呼ばれるもので、信用機関に登録されることで新規の借入やクレジットカードの作成などが困難になります。
信用情報は受任通知の送付によって債権者が信用機関に登録するもので、止めることはできません。信用の回復には5年はかかるといわれますが、ブラックリストに載っても返済が楽になり、生活の立て直しができるならば任意整理するメリットのほうが大きいのではないでしょうか。
まとめ：任意整理で役立つ「受任通知」の基本知識から効果・注意点まで徹底解説
受任通知はさまざまな手続きで使用しますが、任意整理ではとくに大きな効果を発揮します。
とはいえ、受任通知の影響の及ぼす範囲を理解していなければマイナスに働くことも考えられます。
また、弁護士などの専門家に依頼することで得られる利点です。専門家に相談しながら、受任通知の効果を最大限に利用して任意整理を進めてはいかがでしょうか。
