会社の倒産には法律上の倒産前に、「事実上の倒産」と認定される時期があります。
この認定を受けることで、法律的ではまだ倒産していない状態であっても、倒産状態にあるのと同様の処置を受けることができるため、従業員の未払い給与の対応などにあてられます。
今回は、事実上の倒産認定をテーマに、その詳細と具体的な申請方法についてみていきます。
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事実上の倒産認定とは?法律上の倒産との違い
冒頭にもありましたが、会社の倒産には「法律上の倒産」と「事実上の倒産」があります。
法律上の倒産とは、破産手続きや民事再生手続きといった法的な手続きを経て「倒産」と認められた状態です。
具体的には、債務者である会社に支払い能力がなくなって、支払い停止の状態に陥っている、今後もその状態が継続すると法律上で客観的に認められた場合が「法律上の倒産」となります。
しかしながら、前述のような倒産状態に突然になるというはずはありませんので、実際に法律の手が入る前からその会社は倒産状態であることが通常です。
そして、法律上で倒産が認められるのと同じような状態を「事実上の倒産」といいます。
例えば、法的な申請はしていないが事業を停止して経営者と連絡がつかない場合や、不渡りを出して資金繰りがストップしているなどが、事実上の倒産状態にあるとみることができます。
倒産とされた基準日について
会社が倒産したときのあらゆる支払いの手続きや、法的な保護を受けるためには、倒産とされた基準日が重要になります。法律上の倒産と事実上の倒産についての、基準日の考え方は次のようになります。
- 事実上の倒産が認められたあとに法律上の倒産が認められたのであれば、事実上の倒産認定申請日が基準日と定められる。
- 事実上の倒産認定を申請して認定が認められるまでに、法律上の倒産手続きである破産手続き開始決定が降りたのであれば、破産申し立て日が基準日と定められる。
倒産に関する手続きには、基準日が要件になっているものがありますので、くれぐれも慎重に取り扱いましょう。
事実上の倒産認定と未払賃金立替払制度について
倒産基準日が関係する事象として、未払賃金立替払制度があります。
会社が倒産し、または倒産状態にあって従業員の給与が規定通りに支払われていないということがありますが、従業員からすれば給与が支払われないと生活ができませんよね?
そこで従業員を守るための制度として、公的な福祉制度である「未払賃金立替払制度」があるのです。
この制度は要件を満たせば、倒産で給与を受け取れなかった従業員に対して、その一部を独立行政法人健康安全機構が支払うというものです。
制度利用の要件
制度を利用するための要件のひとつに「破産手続き開始申し立て日等の6か月前の日から2年の間に退職していること」があります。
ここに記された申し立て日は倒産基準日をいい、基準日の6か月以上前に退職した従業員は制度の対象ではないということです。
もし、法律上の倒産手続きが何かしらの理由で遅れたせいで、期限についての要件を満たせなくなった従業員は保護を受けられないということですので、会社としては事前に事実上の倒産認定申請をしておくことが重要になります。
事実上の倒産認定の具体的な申請方法
事実上の倒産認定を受けるためには、労働基準監督署に申請しますが、申請は電子証明書を用いた電子申請が可能です。
事業の活動が停止して従業員への賃金支払いが不能となった場合は速やかに労働基準監督署に確認の上、手続きをしておくと安心です。
まとめ:事実上の倒産認定とは?申請方法について
今回は、事実上の倒産認定について、法律上の倒産との違いや、認定申請をすることの重要性について解説しました。
事実上の倒産認定は倒産の基準日とみなされるため、従業員の給与処置で重要なポイントになります。
事業の停止や支払い不能など倒産が見込まれるのであれば、速やかに手続きをして、適切な保護などが受けられるよう対応しておくとよいでしょう。
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