2020.12.14

従業員への未払賃金立替払制度とは〜事実上の倒産でも制度利用が可能〜

法律上の倒産手続きが未済であっても、内情としては倒産と判断できる状態にある会社は届け出をすることで「事実上の倒産」認定が受けられます。

事実上の倒産認定を受けると、従業員の未払い賃金を救済する制度が利用できますので、従業員の生活を守るために、制度について理解しておくとよいでしょう。

今回は、会社が倒産となったときに利用できる「未払賃金立替払制度」についてくわしく解説していきます。

倒産による従業員の賃金の救済処置

会社が倒産しようとしている状況で資金繰りに窮しているなどのときには、従業員への給与が滞ることがありますが、従業員にとって給与が支払われないという事態は生活に関わる一大事です。

従業員の生活を守るために「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、会社などの倒産で賃金が受け取れなくなった従業員に対して、「独立行政法人労働者健康安全機構」が「賃金の一部を立て替えて支払う制度」があります。

ここでいう倒産とは法律上の倒産はもちろんですが、事実上の倒産も制度の対象とされています。

法律上の倒産とは、法的に倒産の手続きがスタートしたことをいい、事実上の倒産とは法的手続きの前であっても既に「倒産状態にある」とみなされる状態のことをいいます。

なお、事実上の倒産認定は労働基準監督署に届け出ることで認められます。

未払賃金立替払制度が利用できる要件とは

倒産による未払賃金立替制度を利用するには、一定の要件を満たしていなければなりません。

要件は下記の通りです。

  • 労災保険の適用事業所として1年以上事業を行っていた事業主に雇用され、倒産によって賃金が支払われぬまま退職した従業員であること
  • 法律上の倒産開始の申立日または、事実上の倒産認定申請日の6か月前の日から2年の間にその会社を退職した従業員であること
  • 未払賃金額について法律上の倒産であれば破産管財人等の、事実上の倒産であれば労働基準監督署長の証明又は確認を受けた従業員であること。

基準日のしばりをつけた要件もありますので、利用にあたっては事前に細かくチェックしておくことをおすすめします。

未払賃金立替払制度で支払われる範囲

会社が倒産した場合に利用できる未払賃金立替制度ですが、すべての未払賃金が支払われるというわけではありません。

まず、適用となる範囲は定期賃金と賞与だけで、通勤交通費などは範囲外のため支払われず、また、未払賃金が2万円未満であるなども対象の範囲とはなりません。

もし、会社から受ける給与の中から貸付金や返済金、社宅の賃料といった差し引かれるものがあれば、未払賃金からそれらを差し引いた額が立替払制度の適用範囲となります。

立替払制度では未払いの対象賃金の全額が支払われるわけではありません。

未払賃金総額の100分の80が支払われると定められていますが、さらに退職日時点での年齢を基準に支払い額の上限がありますのでご留意ください。

未払賃金立替払制度の請求方法

未払賃金立替制度の利用を希望するのであれば、まず労働者健康安全機構のHPで賃金立替払請求書をダウンロードするなどして作成します。

この書類には未払賃金の証明書が必要ですが、証明書は、法的な倒産であれば破産管財人等から発行してもらい、事実上の倒産であれば労働基準監督署長の証明をつけることになります。

その後、審査を経て従業員には賃金が立て替えて支払われることになりますが、これはあくまでも倒産した会社が支払うべき賃金を労働者健康安全機構が「立替払い」したものです。

立て替えられた未払い賃金分は、労働者健康安全機構が債権者となって債務者である会社の倒産手続きに参加することになります。

まとめ:従業員への未払賃金立替払制度とは~事実上の倒産でも制度利用が可能~

会社が倒産し、従業員への未払賃金がある場合の救済措置について解説しました。労働者を守るための制度として、未払賃金立替払制度がありますが、これを利用するためには、「倒産」と認定された日が重要になります。

諸般の事情で法的な倒産の申請が遅れているなどがあれば、かならず事実上の倒産認定が受けられるよう対応しておきましょう。

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