経営者の方は失業保険の存在をもちろんご存知でしょうが、あまり縁がなければ詳しく知らないという方もいるかと思います。
失業保険はリストラされた人には大事な手続きとなりますが、一方でトラブルも起きています。
ここでは、経営者として知っておきたい「失業保険の中身」と「リストラで起きているトラブル」について解説していきます。
自社で同じ問題を起こさないためにも、押さえておきたいポイントです。
Contents
失業保険とは?リストラ後の生活を支える
失業保険とは、雇用保険に一定期間加入していた人などが仕事を失った際に失業給付などを受けられるもので、リストラされた人にとっては、再就職までの大事な収入源となります。
具体的な受給の条件や金額などを確認していきましょう。
失業保険の受給には条件が複数ある
失業保険は、雇用保険に加入していた失業者であることに加えて、雇用保険の加入期間や受給を受ける年齢などによって受給額が変わります。
受給できるのは就業していた間の平均賃金に対して5~8割程の金額で、決定する日数の間だけ支給されます。
失業保険は公平な制度というよりも、苦しい立場にある人を支えるといった側面が強く、もらっていた賃金の平均額が少ない人ほど、賃金に対して高い割合で受給額が決定します。
失業給付金は離職理由によって変わる
年齢や加入期間など他の条件もありますが、離職理由によって給付開始の時期が大幅に変わります。
具体的には次の通りです。
自己都合退職 | 待機期間7日+給付制限3カ月 |
会社都合退職 | 待機期間7日間 |
自己都合退職は待機期間から3か月先まで支給はありませんが、会社都合退職ならば待機期間後の8日目から支給の対象になります。
給付できる期間にも違いがあり、自己都合退職は90~150日のところ、会社都合退職は90~330日となります。
望まない退社で生活が不安定になっているため、手厚く保護される仕組みです。
リストラされた人が受け取れる失業給付金の額
受給額は、年齢や雇用保険の被保険者であった期間などによっても異なります。
リストラは中高年層が中心になるため、雇用保険の被保険者であった期間も長いでしょう。その場合、離職理由による給付額の違いはより大きなものになります。
例えば、40歳で被保険者期間が15年として考えてみましょう。給付日数は次の通りになります。
自己都合退社の場合…120日
会社都合(リストラ)の場合…240日
受給額は「賃金日額×給付日数」で算出するため、ちょうど2倍の差です。
「2倍」とだけ聞けばさほど大きな差ではないように錯覚しますが、賃金日額を1万円とすれば、受け取る金額は120万円も違ってくることになります。
リストラで起きる失業保険に関するトラブルとは?
失業保険に関して一通り確認しましたが、離職理由によって受給額が変わるものの、とくにリストラでトラブルになる要素はないように思えます。
では、なにが問題になるのでしょうか。
会社が自己都合退職にしたがる理由
失業保険にかかわるトラブルは離職理由にあります。
離職理由を自己都合退職にしたいと思う会社が多く存在し、経営者が指示して会社ぐるみでおこなうこともあれば、担当者が自己判断でおこなうこともあるようです。
この背景には、助成金の利用があります。
雇用に関する助成金や補助金制度を厚生労働省はいくつか用意しており、人材の育成や新規雇用のために利用できます。
しかし利用には一定期間会社都合退職者を出していないことが条件としてあり、リストラしてしまうと助成金返還の必要性が出てきます。
リストラする会社は経営難であるわけですから、助成金返還を求められても困るわけです。
自己都合退職の強要は違法行為
企業側にも事情があることがわかりましたが、かといってリストラ後の生活を支える給付金が大幅に減ってしまうような行為が許されるわけではありません。
言葉巧みに誘導することも、自己都合退職に追いやることも本来のリストラに反する違法行為で、詐欺罪や強要罪などが適用される可能性もあります。
会社本位で誤った手続きしないために
離職理由を巡るトラブルは、リストラに関係する手続きやリストラの影響が及ぶ範囲を正しく理解せず、踏み切ったことが起因する場合もあるでしょう。
それは、経営者の方針が担当者に正しく伝わっていないことも考えられます。
やむを得ず決断するリストラでも、決行する時期を調整することはできます。
経営者は、人員削減によるメリットにだけ目を向けるのではなく、総合的な視野をもってベストな選択を心がけましょう。
まとめ:リストラで失業保険トラブル?会社本位の手続きをしてはいけない理由について
失業保険はリストラされた後の生活を支える大事なものですが、一方で会社も助成金などを受けていれば「自己都合退社にできないか」といった考えが頭をよぎることもあるでしょう。
しかし離職理由を会社の都合で変えるのは不当な行為で、生活を支える失業給付金を少なくさせてしまうものです。
今回の内容を経営者としてしっかり覚えていただき、未然にトラブルは回避しましょう。