会社経営は、良い時もあれば悪い時もありますので、経営が上手くいかなくなれば「倒産」することもあります。そして会社が倒産するということは、雇用していた従業員なども解雇しなくてはいけません。
しかし、解雇に関する知識がなければどのような対応をとれば良いのか判断できないですよね?
そこで今回は、会社が倒産する際に従業員に対して「いつ」解雇通知するのが良いのか解説していきます。
トラブルになりやすいことですので、ぜひ参考にしてみてください。
「労働債権のことを考えると」解雇は早い方がよい
従業員を解雇する際に知っておくべき点としては、解雇する時期が早ければ早いほど破産手続きの中で「財団債権」として扱われる労働債権が少なくなるという部分です。
そのため、一般債権への配当は逆に多くなります。このような観点から、労働債権の抑制のためには従業員の解雇タイミングは早いほうが好ましいと言えるでしょう。
「労働争議のことを考えると」解雇通知は事業が停止する当日
では、実際のところ倒産を踏まえた上での解雇通知はいつするのが良いのでしょうか?状況によっては「事業停止日の当日」が適当なタイミングとなる場合もあります。
その大きな理由として、事前告知してしまうと労働争議が生じてしまう恐れがあるからです。「どうせ倒産して解雇になるならもう会社に行かなくていいや…」と無断欠勤する人もいますし、倒産することを債権者に情報漏洩するリスクも高まります。
ここで心配なのが「事前に倒産や解雇のことを伝えなくても問題ないのか」という点ですが、これは違法ではありません。
ただし、解雇予告通知をしなかった場合、解雇する際に1ヶ月分の給与を支給する必要があります(解雇予告手当)。
解雇通知を出す段取り
事前に解雇通知をしてスムーズに進むのであれば問題ありませんが、上記のように労働争議が起こることが想定されるのであれば、倒産することを事前に伝えることは好ましくありません。
では、通知当日はどのような流れで行うのが良いのでしょうか?最も大事なことは、業務終了後にその日会社にいるすべての従業員を集めて現状を伝えることです。
弁護士が倒産の手続きを進めていること、なぜ倒産することになったのか、今後の支払いについてすべて説明します。その後、書面を交付することで解雇通知を行います。
その際、会社に置いてある私物の持ち帰りや保険証の返還についても説明しておきましょう。もし当日に会社にいない従業員がいる場合、上記の内容をまとめた書面を作成し、解雇通知書面として郵送するようにしましょう。
従業員への説明が終われば、私物の持ち帰りや預けていた鍵・備品などの返還を確認し、会社や事務所に鍵をかけてその日は終了です。必要に応じて告示書の掲示もしましょう。
従業員に対する対応
解雇を告げられた従業員はさまざまな反応を見せると思います。
とくに多いのが、なぜ破産してしまうのか、今後の給与の支払いはどうなるのかなどの質問です。
まず、会社に預金がある場合はその場で最終月の給与を支払うようにしましょう。場合によっては解雇予告手当を同時に支給するのも大事なことです。
給与がしっかりと支払われたということで、その時点で従業員の心配が一つ消え、態度も軟化することがほとんどです。
その後、なぜ破産することになったのかを説明し、今後どのような流れになるのかを説明します。
もし代表者の方が同席して最後の挨拶をしたい場合もありますので、代表者の方に同席希望か確認しておくことも大切です。
まとめ:会社の倒産・事業停止が決まれば事前告知としていつ従業員に伝えるべき?
今回の記事をまとめると以下のようになります。
- 解雇は本来であれば早めに行うのが好ましいが、場合によっては遅らせる必要もある
- 解雇通知をする際には、解雇する理由と今後の対応について丁寧に説明する
- 解雇予告手当や最終月の賃金の支払いなどを通知当日に渡すのがおすすめ
会社の都合で解雇という形になりますので、トラブルを避けるためにもしっかりと解雇する理由だったり賃金の支払いをするようにしましょう。通知タイミングは、自社の状況を見ながら決めることが大事ですので、弁護士としっかり話し合いをしましょう。