2021.1.6

資金繰りとは?悪化の原因と資金ショート時の優先すべき支払い

「資金繰り悪化原因と改善方法を知りたい…」

「資金ショートになってしまったが何から支払っていけばいいのだろうか…」今のご時世、資金繰りに悩みを持つ経営者は多いことでしょう。

資金繰りが悪化した場合には、収益を上げるのはもちろんのこと、支払いについても深く考えて行動しなくてはなりません。しかし、実際に資金ショートに陥った場合の支払い優先順位などについて、ご存じの方はほとんどいないのではないでしょうか?

そこで本記事では、資金繰りの悪化原因や資金ショート時の優先すべき支払いについて解説します。

そもそも資金とは?

そもそも資金とは、現金や預貯金(普通預金・定期預金)など会社としてすぐに使えるお金のことを指します。つまり、保有する株式や貸付金・売掛金など、すぐに売却できない資産は資金には含まれません。

資金繰りとは?

資金繰りとは会社が保有する資金を管理・運用することを指します。そして、資金繰りの最終的な目的は収入と支出の管理により、支払い時における必要金額を用意できるようにすることです。

資金繰りと資金調達の違いとは?

資金調達とは、資金補填や事業拡大を目的として、金融機関などから事業に必要な資金を調達することを指します。資金繰りは先述した通り資金の管理・運用ですので、調達とは明確な違いがあります。

ただし、資金繰りの手段として、資金調達はその一つに含まれていると言えるでしょう。

資金繰りとキャッシュフローの違いとは?

資金繰りとキャッシュフローは混同されがちですが、資金繰りは未来のお金の流れについて考えるものであり、キャッシュフローは過去のお金の流れを把握するものという違いがあります。

資金繰りがうまくいかなければ倒産もあり得る

資金繰りがうまくいかなければ、最悪の場合倒産してしまう可能性がありますし、支払いが滞ることで信用も失ってしまいます。ですので、資金繰りが苦しい場合には、資金繰りの悪化原因と改善方法を考えなければ、解決の糸口を見出すことはできないでしょう。

健全な資金繰りは、昨今の不安定な情勢において、倒産させずに経営を維持していくために必要不可欠であると言えます。

資金繰りで倒産してしまう理由とは?

資金繰り悪化による倒産理由はさまざまですが、銀行への返済が遅れることで損害遅延金が発生し、返済がますます大変になり倒産…。期限の利益が喪失することでまとめて返済しなければならない状況となり倒産…。新規の融資を受けられず倒産…。資金繰り悪化で取引先に迷惑をかけてしまい、契約を解除されたことで倒産…。といったことが考えられます。

また、資金繰りの悪化により赤字でなくとも黒字倒産してしまうことがあります。では、そもそも資金繰りが悪化してしまう原因は何なのでしょうか?

資金繰りが悪化してしまう原因とは?

続いて、資金繰りが悪化してしまう原因について見ていきましょう。

資金繰り悪化原因その1:売上の減少

売上が減少しても支出を減らせれば、利益を残すことも当然可能です。しかし、固定費として出ていくお金というのはなかなか削減するのは難しいものです。また、売上が減少するなかでの人員・設備などの削減は、緻密に計算した上でないとさらなる売上の減少を加速させてしまう原因にもなります。

徐々に売上が減少していく場合には、時間もありますから事業規模を縮小するなどして、さまざまな対応がとれます。しかし、大口顧客からの受注ストップや、法規制によりこれまでの経営手段が通用しなくなって起こる急激な売上減少は、対応を取りにくいために資金繰り悪化の致命的ダメージとなることがあります。

資金繰り悪化原因その2:赤字経営

順調に売上を伸ばしていた会社の一時的な赤字であれば資金ショートにつながりませんが、長期的な赤字は言うまでもなく継続的な資金流出が生じるため、資金繰り悪化の原因になります。

そして、赤字経営脱却をかけたさらなる資金調達が深刻な事態を招くことがありますので、負債を減らすという点が大切になります。

資金繰り悪化原因その3:貸し倒れ

経営悪化は自社だけに起こり得ることではなく、取引先を含め全ての会社においてその可能性があります。取引先の倒産に伴い、そこに売掛金があれば回収できなくなる(貸し倒れ)ケースもありますので、注意が必要です。

赤字経営の中、多額の売掛金を計算に入れて資金繰り計画をしていた場合には、悲しいですが連鎖倒産も現実的なものになるでしょう。そうならないためにも、取引開始前の与信審査はきちんと行うことです。

連鎖倒産とは…取引先の倒産で不良債権が発生した会社が、その影響により倒産すること。

資金繰り悪化原因その4:投資の失敗

投資と一口に言っても、株式投資や不動産投資、設備投資などありますが、必ずしも芳しい結果が得られるわけではないので、それが資金繰り悪化原因になることがあります。

考えられる投資の失敗としては、設備投資に対するリターンが少なかった、不動産投資で購入した建物の空室率が高く、返済額に見合った賃貸収益が得られなかった、などが挙げられます。

設備投資として、借入から機械や車両などを購入した場合には、注意しなければならない点があります。それは、借入金の返済期間が短ければ、減価償却費より返済額が上回ってしまうことがある点です。利益が出ても大半が返済にまわってしまい、資金が枯渇したなかで税金を支払わなければいけないという事態は、資金繰りにおいて望ましくない姿です。

資金繰り悪化原因その5:過剰在庫

本来の需要よりも多く商品を入荷してしまい、売れ残ってしまった過剰在庫の存在も資金繰り悪化の原因になります。過剰在庫となった商品は保管費用や維持費が発生したり、倉庫を圧迫させてしまったり、劣化による廃棄によっても収益が悪化します。

在庫は持っているだけでお金がかかりますが、在庫管理のコストは見えにくいため、資金繰りにおいて見逃しがちなポイントです。過剰在庫は処分ではなくなるべく売却を考え、過剰在庫や不良在庫を出さない仕組みを作ることが大切です。

そのほか、大量仕入れのための資金を借入金により調達した場合に、その金利が資金繰りを圧迫する原因にもつながります。

資金繰り悪化原因その6:急激な売上増加

売上増加は資金繰り悪化と真逆の存在に思えますが、実は急激な売上増加も、資金繰り悪化につながってしまうことがあります。売上が急激に上がるタイミングでは、売上を作るための仕入れや人件費もそれに合わせて増加する傾向にあります。

仕入れや人件費などの支出が急激に増えても、売掛金の回収には一定期間が必要になりますので、売掛金の回収が間に合わないことで資金繰りが悪化してしまうのです。

ですので、売上増加による人件費・経費の増加と売掛金の回収時期はしっかりと把握する必要があります。また、売上の増加傾向を見込んで人員を揃えたものの、想定していた売上よりも低くなってしまえば、人件費が圧迫して資金繰りが悪化してしまうことがあります。

さらには売上増加に伴う残業代の支払い、人手不足時のアルバイト代や派遣代などがかさんでしまい、倒産に陥ってしまうことも考えられます。

資金繰り悪化原因その7:借入金返済額の増加

売上に対して借入金が多ければ、それも資金繰りを悪化させてしまう原因になります。減価償却費+税引き後当期純利益の計算で求められる数字が、シンプルに1年間の返済額としての限度になるため、この金額以上の返済額があれば、資金不足が発生する状態です。

資金繰り悪化の中では、借入金返済のための更なる借入には注意し、返済スケジュールの見直しなどで資金繰りの調整をすると良いでしょう。

税引き後当期純利益とは…税金など全ての費用を差し引いた会社の最終的な利益のこと。

資金繰り悪化原因その8:資金繰り表を作成していない

資金繰り表とは、文字通り資金繰りを一覧にしたものですが、資金繰り表を作成せずにきちんと状況を把握していないと、資金繰り悪化を招いてしまうことがあります。

自身の資金繰り状況の確認だけではなく、金融機関などに向けての参考資料にもなりますので、用意して定期確認することをおすすめします。

資金繰り悪化原因その9:適正な利益配分になっていない

利益に見合わない株主配当や高額役員報酬は、会社の存続に大きな影響を与え、資金繰り悪化を招く可能性を高めてしまいます。

毎年資金繰りに悩まれている会社であれば、利益配分が適正であるかバランスを見て考えましょう。

資金繰りの改善方法と資金繰りの悪化防止方法とは?

資金繰りの改善方法と資金繰りの悪化防止方法とは?

続いて資金繰りの改善と悪化防止方法について見ていきましょう。

資金繰りの改善・悪化防止方法その1:アウトソーシングの活用

アウトソーシングとは、業務を他社に任せたり社外から生産に必要な製品や部品を調達したりすることを指します。売上は毎月変動するものですので、業務に関わる人件費などの固定費が、資金繰り悪化につながることは多々あります。

アウトソーシングであれば固定費となっている部分を変動費に変えられるため、売上減少の中であっても利益の確保が可能となります。

確保できる利益の範囲内でアウトソーシングすれば、経営を存続する上でのリスク軽減にもなるため、教育コストや管理コストのかかるような一定の業務については、アウトソーシングを賢く活用しましょう。

資金繰りの改善・悪化防止方法その2:収益性の低い資産の売却

購入した不動産の空室率が高く、想定していた収益が得られなければ、管理費などもかかりますので売却して損失を抑えましょう。

資金繰りの改善・悪化防止方法その3:貸し倒れ防止のための与信審査

経営が不安定な会社や、支払い能力の低い会社からの仕事は貸し倒れの可能性が0ではないので、与信審査を行うようにしましょう。特に、売掛金が大きい仕事の場合には、支出の面も考えて注意が必要です。

資金繰りの改善・悪化防止方法その4:入金・支払いサイトの変更

入金サイトとは、売掛金が実際に入金されるまでの期間のことを指し、支払いサイトは買掛金を支払いするまでの期間のことを指します。

支払いサイトは長めに設けて、入金サイトを短めにできれば、手元資金のショートを防げます。もし、売掛債権が期限内までに支払われない場合には、定期的に連絡を入れるなどして回収を強化しましょう。

資金繰りの改善・悪化防止方法その5:在庫管理の徹底

過剰在庫は、格安の仕入れ価格につられて大量に仕入れてしまったり、マーケティング要素やニーズを把握しきれなかったりすることで起こります。過去の売れ筋・死筋商品についての分析や、未来の需要予測を考えながら、仕入れ価格だけに惑わされることなく、在庫管理・発注を徹底することが大切です。

資金繰りの改善・悪化防止方法その6:役員報酬の適正化

役員報酬は1年ごとの見直しとなりますが、前年度の利益率や同業種における役員報酬の相場などを参考にして、役員報酬を適正なものにしましょう。

資金繰りの改善・悪化防止方法その7:コストの削減

コストの削減案としては、

  • 人件費の削減
  • システムの導入(IT化)
  • リモート化
  • 節税によるコスト削減
  • 受託販売による在庫の削減
  • 交通費の削減
  • 事務用品費の削減

などが挙げられます。無駄となっている支出を減らすことは資金繰りの改善につながります。

資金ショートが起こる原因とは?

続いて、資金ショートが起こる原因について見ていきましょう。

資金ショートが起こる原因としては、売上・収入の減少が挙げられます。当たり前のことですが、収入が減少すれば、その分支払いに回す資金が枯渇してしまうことになります。そのような中で事業用設備などの故障や、損害賠償など大きな支払いが発生すれば、資金繰り悪化につながり、経営が成り立たなくなってしまうことが考えられます

では、「資金が足りない場合」「すべての支払いができない場合」にはどうすればいいのでしょうか?まず経営者として考えなければならないことは、支払いの優先順位についてです。

人件費・材料費の支払いは最も重要

あらゆる支払いがある中で、人件費の支払いは最も重要です。人件費が支払えなければ従業員は仕事へのやる気を失い、離職に繋がってしまいます。

また、飲食店を例にすると、食材がなければそもそも商売になりません。これらの支払いは、他の支払いを行っていくうえでも基盤になってくるため、支払いの優先順位は高いものになります。

税金の支払いについて

税金の支払い順位も高いものの一つとして考えなくてはなりません。なぜなら税金徴収は、国税徴収法と呼ばれる法律により回収について定められており、放置することで差押になってしまうからです。

差押が借入のある金融機関の預金に入るとそれが知られてしまい、借入分を一括で支払わなければならない「期限の利益喪失」となってしまいます。

この期限の利益というものは、決められた返済日までに債権者が待ってくれるものですが、喪失により一括で支払えなければ連帯保証人にも請求がいくことになりますので、税金の滞納は大問題に発展してしまうのです。

銀行への支払いについて

では、資金ショート下で銀行への支払いをどう考えるかについては、銀行の立場に立って考えると分かります。銀行の仕事はお金を貸すことではなく、回収することが仕事です。

言ってみれば、会社が他の支払いを遅らせて(従業員への支払いなど)銀行返済を優先したことにより倒産してしまえば、大きな損失(貸し倒れ)となってしまいます。

返済が難しい場合には、返済期間の変更(リスケジュール)という方法がありますので、経営破綻されるよりはリスケジュールをしてもらって、最終的に返済してもらった方が助かるのです。

税金の滞納は倒産につながる

税金の滞納があると、税務署などによって財産が差押えられることをお伝えしましたが、それによって経営破綻してしまうケースもあります。また、税金の滞納処分による差押は破産手続きが開始されたとしても、停止や取り消しもされない点に注意が必要です。

まとめ:資金繰りとは?悪化の原因と資金ショート時の優先すべき支払い

いかがでしたか?今回の内容をまとめると、

  • 資金繰りとは会社が保有する資金を管理・運用することを指す
  • 銀行への返済遅延や新規融資を受けられないなどで倒産してしまう
  • アウトソーシングの活用やコスト削減などで資金繰りは改善させる
  • 人件費と税金の支払い優先順位は高い
  • 税金の滞納は差押に繋がりそれによって経営破綻することもある

という点がポイントでした。今回の記事を参考に、資金繰り悪化の原因を特定した上で改善を進めましょう。

また、資金ショートに陥ってしまうと、どう対応すればよいのか迷われてしまうかと思いますが、人件費と税金の支払いは優先すべきという点は必ず覚えておきましょう。差押になれば、立て直しも非常に難しいものになってしまうので注意が必要です。

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