2020.10.31

給料未払いは罪であり刑事事件にも発展!労働基準法違反はNG!

経営者の方または管理職の方は、労働基準法に基づいて行動を取る必要があります。万が一違反した場合には刑事事件として告訴されたり、罰金を科せられたりして罪を負う恐れもあるのです。

このような場合従業員からの信用だけではなく、取引先や会社としての信用も失うため、経営者としては罪を負わないためにも、給料未払い(未払い賃金)の正しい知識を身に着ける必要があると言えるでしょう。

そこで本記事では、以下の点を解説していきます。

  • 賃金や給料未払い(未払い賃金)について
  • 給料未払い(未払い賃金)と労働基準法について
  • 給料未払い(未払い賃金)で刑事事件として罰則される流れ
  • 給料未払い(未払い賃金)で刑事事件にまで発展してしまった場合のリスク

経営が傾く中で、給料未払い(未払い賃金)について理解する必要のある経営者の方は是非ご覧ください。

賃金の定義

給料未払い(未払い賃金)により罰せられることもありますが、そもそも問題となる賃金の定義について、理解しなければなりません。

労働基準法第11条では、賃金を以下のように定義しています。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。-労働基準法第11条

労働基準法では、労働の対価として支払われるものを賃金と呼んでおり、給与や時間外手当、深夜労働手当や休日労働手当などが賃金に該当します。

給料未払い(未払い賃金)とは?

給料未払い(未払い賃金)は、雇用契約や従業規則で定められた賃金を期日までに支払わないことをいいます。毎月支払われる固定給だけでなく、割増賃金や最低時給に満たない給与もそれに含まれます。

賃金に該当しないものとは?

給料未払い(未払い賃金)は従業員との大きな問題となりますが、その賃金に該当しないものが以下になります。

  • 退職金
  • 結婚祝金
  • 死亡弔慰金
  • 災害見舞金

これらの恩恵的給付は、原則として賃金とみなれません。ただし、労働協約や就業規則、労働契約などによりあらかじめ支給条件が明確なものはこの限りではありません。

福利厚生費は賃金に含まれる?

使用者はさまざまな福利厚生に関する給付を行うことがありますが、これは賃金にあたるのでしょうか?もし賃金として扱われるのであれば、労働基準法上の規制を受け支払いの義務を課せられることになります。

例えば以下のようなものが福利厚生費に該当します。

  • 住宅手当
  • 住宅ローン補助金
  • 食事に関わる費用
  • 生活に関わる援助金
  • 社宅の賃貸
  • 家族手当
  • 生活費/教育費などの貸し付け

結論として、住宅手当や家族手当といった福利厚生費は労働の対償とはいえないため、賃金には見なされません。

ただし、恩恵的給付のときと同様のことが言えますが、就業規則などで支給条件や支給金額が定められている場合には賃金に該当します。

残業代の支払いについて

雇用契約書や就業規則で定められている勤務時間を超えた場合には、残業代を支払わなければならず、法定労働時間を超えた場合にはその分上乗せする必要があります。法定労働時間を超えての勤務を命じる場合には36協定を労働者と締結しておく必要があり、届け出をしないまま法定労働時間を超えて労働させてしまうと、労働基準法違反になります。

休業手当の支払いについて

労働基準法では、使用者の都合により労働者を休業させた場合には、休業させた所定労働日に対して、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。ただし、懲戒処分としての自宅待機とは区別されており、自宅待機の場合は原則として無給となっています。

年次有給休暇取得時の支払いについて

年次有給取得中の賃金については、就業規則などの規定に基づいて平均賃金または所定労働時間した場合に支払われる、通常の賃金を支払わなければなりません。

例えば、退職時に労働者から有給消化を申請されたにもかかわらず、支払わなければ給料未払い(未払い賃金)として請求される可能性があります。

解雇予告手当の支払いについて

やむを得ず労働者を解雇する場合には、30日以上前に予告するか、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

また、就業規則などの規定に退職金が規定されている場合には、支払いをしなければ給料未払い(未払い賃金)として請求されてしまう可能性があります。

労働基準法第24条で定められた賃金支払いの5原則

賃金支払いには労働基準法で定められた5原則があり、原則を守らなければ給料未払い(未払い賃金)に該当するとして、雇用者には罰則(罰金刑の詳しい罰則は後述)が適用されてしまいます。
その、賃金支払いの5原則は以下の通りです。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回払い以上の原則
  • 一定期日払いの原則

それぞれの内容を見ていきましょう。

通貨払いの原則

賃金は原則として、通貨で支払わなければなりません。通貨以外による現物給与は禁止されており、食材や商品、貴金属などを給料の代わりとするのは認められません。

直接払いの原則

直接払いの原則は、必ず労働者本人に対して支払わなければならず、本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものです。したがって、労働者の親やその他法定代理人などに支払うことは労働基準法違反となり、支払いは無効となります。

ただし、何等かの特別な事情で給料を受け取れない場合は不合理ですので、家族を代理人ではなく使者として扱い、社会通念上本人に支払うのと同様の効果を生じる人であれば、原則に反しないと考えられています。

全額払いの原則

賃金の一部を控除して支払うことを禁止し、必ず全額まとめて支払う必要があるという原則です。労働者は賃金全額が支払われることを想定して生活をしているため、一部の支払いしかされなければ生活の安定はありません。

例えば、積立金という名目などで賃金の一部を支払わなかったりするのは、許されないということです。

ただし、税金や厚生年金保険料、雇用保険などの社会保険料など法律に基づく控除は差し引きが認められています。また、給料の前借りは次の賃金から差し引いても、全額を支払っていることに変わりませんので、問題にはなりません。

毎月1回以上払いの原則

毎月1回以上払いの原則は、少なくとも毎月1回以上賃金支払いを実施しなければならないと定めた原則です。つまり、試用期間や訓練期間などを理由に支払わないのは違反であり、2カ月に1回の賃金支払いは認められないということです。

ただし、臨時に支払われる賃金や賞与、その他これに準ずるもので労働基準法施行規則第8条に掲げる、算定期間が1か月を超える精勤手当(無欠席、欠勤が少ない場合に支給)、能率手当(能率をあげた労働者に対して支給)などは例外として認められています。

一定期日払いの原則

賃金支払いは「毎月25日支払い」というように、一定の期日に支払う必要があります。

給料未払い(未払い賃金)で刑事事件として立件される流れとは

給料未払い(未払い賃金)などの法違反行為は、どのような流れを経て刑事事件として扱われているかご存じでしょうか?

ほとんどの場合、労働基準監督署が行っている、

  1. 行政機関としての立ち入り調査
  2. 調査の過程や調査結果に基づいて行政指導を行う
  3. 行政指導の遵守状況

などを経て、悪質な事案だと判断された場合に刑事事件と発展します。
労働基準監督官には、行政機関として取り締まるために「事業者の事業場を臨検」「帳簿・種類の提出を求める」「尋問を行う権限」、さらに「司法警察員として労働基準法違反について操作する権限」があります。

労働基準監督署は独自の情報に基づき特定の会社の調査を行ったり、従業員などの申告に基づいて労働基準法違反の有無について会社へ立ち入り調査を行ったりします。

労働基準監督署が行う調査の過程で、

  1. 労働基準法違反の事実の確認
  2. その程度が重大かつ悪質であると判断された
  3. 是正勧告などの行政指導に従わない事案

上記のような場合、司法警察権限を行使し、強制捜査を含めた捜査を労働基準監督官が行います。

会社側が捜査に非協力的かつ証拠隠滅の恐れがある場合には、労働基準監督官が逮捕するケースもあります。そして、必要な捜査が終わったら送検、つまり書類や証拠を検察官に送致します。

このように、労働基準監督官が取り締まりに関与する過程で、悪質な事案だと判断された場合、犯罪としての捜査をスタートして刑事手続へと移ります。

給料未払い(未払い賃金)で刑事事件となった場合に考えられるリスク

労働基準法に違反した場合、使用者及び会社が罰則を受けます。ここでいう使用者とは、経営者・部長・店長・所長など、各事業において権限を持っている管理者のことです。

違反した内容によって罰則は異なりますが、与えられる罰則は以下のようになっています。

  • 30万円以下の罰金
  • 50万円以下の罰金
  • 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金

では、どのような場合に罰則が発生するのか見ていきましょう。

働いた時間分の給料を支給しない

従業員が働いた時間分の給料を支給するのは、使用者に与えられている義務です。もし、これを違反した場合には処罰対象となります。

最低賃金を下回る給料を支給

各地域で定められている最低賃金法に基づいて、最低賃金を下回る給料を支給している場合も罰則対象となり、50万円以下の罰金が科せられます。

決められた給料日に給料が支払われていない

決められた給料日に給料が支払われていない場合も同様に罰則対象となり、30万円以下の罰金が科せられます。

残業代の未払い

もちろん、残業代の未払いも罰則対象となり、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

労働基準法・最低賃金法と刑事罰について

労働基準法・最低賃金法と刑事罰について

先ほど罰則となる例を挙げましたが、具体的な労働基準法と最低賃金法における罰則を紹介します。

労働基準法第24条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
―労働基準法第24条抜粋

労働基準法第24条の通貨払いの5原則(通貨払いの原則・直接払いの原則・全額払いの原則・毎月1回払い以上の原則)に違反すると、30万円以下の罰金刑になります。

労働基準法第37条

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
―労働基準法第37条抜粋

労働基準法第37条の時間外労働や休日労働、深夜労働に対する割増賃金の支払いに違反すると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑になります。

最低賃金法4条

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
―最低賃金法4条抜粋

最低賃金には、都道府県ごとの最低賃金である地域的最低賃金と、特定の産業における最低賃金の特定最低賃金があります。地域的最低賃金の支払いに違反すると、50万円以下の罰金刑となります。

会社が刑罰を受けるとどうなる?

労働基準法違反は、罰金だけが会社にとってのダメージになるわけではありません。ハローワークの助成金を受給できなくなったり、融資を受けることができなくなったり、社会的信用が下がるなど多くの不利益が生じます。

労働基準監督署からの調査、改善指導の上悪質であると判断されれば刑事事件に発展しますが、送検された案件に関しては厚生労働省が、労働基準関係法令違反に係る公表事案として公表します。社名や所在地が明らかになりますので、それが発端となり倒産に繋がってしまうことも考えられます。

給料未払い(未払い賃金)に生じる利息と遅延損害金について

給料未払い(未払い賃金)において、請求により遅延損害金や遅延利息の上乗せがあり、そうなれば、もともとの賃金以上の金額が発生してしまいます。遅延利息は、規定された期日に支払われずにそのまま退職した場合、年利14.6%の遅延利息が退職の翌日から発生します。

ただし、破産申し立てや天変地異などの、やむを得ない事情では利息の上乗せは認められません。遅延損害金は、弁済期になっても履行されない債務に対して発生し、本来の支払日の翌日から年利3%の上乗せとなります。

給料未払い(未払い賃金)による労働者の動きについて

給料未払い(未払い賃金)がある場合には、労働者が未払い賃金を請求するために、証拠収集に動くことが考えられます。タイムカードや勤怠表など労働時間を証明できるものと、就業規則など賃金規定が分かるものを準備し、それを元に請求してきます。

労働基準監督署への申告

労働者が労働基準監督署に証拠書類などを用意して申告すると、先述もしましたが、調査が開始されます。使用者側は労働者に対して不利益な取り扱いをすることは認められていませんので、解雇や減給などをすることは出来ません。

指導勧告を受け入れない場合には書類送検されて刑事事件として扱われることもありますが、一般的には、罰則が適用される前に指導勧告にて改善すれば、いきなり送検されることはないと言われています

給料未払い(未払い賃金)はなぜ発生する?

続いて、給料未払い(未払い賃金)が発生する理由について見ていきましょう。

経営の悪化

売上の急激な減少などにより、労働者に支払えないほど資金繰りが悪化すると、給料未払い(未払い賃金)が発生し倒産にもつながってしまいます。給料の支払いが滞ることで、労働者が会社から離れていけば売上回復の見込みもなくなってしまうことでしょう。

労働者とのトラブル

労働者との間でなんらかのトラブルがあった場合には、許すことのできない行為などで、給料を支払わないという事も考えられます。ただし、トラブルがあったとしても給料未払い(未払い賃金)や、勝手な控除は原則認められません。

破産手続きにおける給料未払い(未払い賃金)について

破産手続きをすると、会社に残った財産を換価処分して債権者に対して弁済するのですが、労働債権(未払い賃金)については他の債権者よりも支払いが優先(優先的破産債権)されます。

また、破産管財人からの支払いを待っているうちに労働者の生活が困ってしまうこともあるため、国は未払賃金立替払制度という会社に変わって給料未払い(未払い賃金)を立て替えてくれる制度を用意してあります。

まとめ:給料未払いは罪であり刑事事件にも発展!労働基準法違反はNG!

いかがでしたか?今回の内容としては、

  • 給料未払い(未払い賃金)は雇用契約や従業規則で定められた賃金を期日までに支払わないことをいう
  • 賃金支払いには労働基準法で定められた5原則があり原則を守らなければ罪になる
  • 労働基準法違反は罰金だけでなく助成金や融資を受けられなくなることがある

以上の点が重要なポイントでした。
給料未払い(未払い賃金)は労働基準法に違反する明らかな罪ですので、このようなリスクを回避するためには、法律に関する知識が必要となります。

もちろん、細かい部分まで理解する必要はありませんが、最低限の知識は経営者として持っておくべきです。予めある程度の知識があれば、いざという場合に慌てることなく適切な対応を取ることができるため、重大な事態には繋がらないでしょう。

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