株式会社のみが利用できる債務整理の1つである特別清算について、経営者の皆さんは知識をお持ちでしょうか?
特別清算は、同じ清算型の破産とは処理や手続きが異なります。そこで本記事では、特別清算における債務の扱いをテーマに解説していきます。
特別清算では債務の扱いはどうなる?
「特別清算」は「債権者から同意を得て」債務整理を行うもので、債権者との協定通りに債務の弁済が完了すれば、資産と負債は0になるという意味を持ちます。
端的に特別清算での債務の扱いは、債権者に協定案(弁済計画)を認めてもらい、その弁済計画通りに弁済が行われれば、残債務が免除(免責=一般的な意味での免責)されるのです。
特別清算(協定方式)の流れは下記になります。
- 株主総会で解散決議を行う(清算人が会社を管理)
- 債権者に債権申出を行うように求める
- 特別清算の申立てを裁判所に行う
- 裁判所から特別清算開始決定を受ける
- 清算人が債権の金額を調べる
- 債権者と和解するための協定案を裁判所に提出
- 債権者集会で協定案について決議する(3分の2以上の賛成で可決)
- 協定の内容通りに弁済を行う
- 弁済が完了すれば残債額が免除(免責=一般的な意味での免責)される
破産手続きの免責について
破産手続きの場合、管財人が換価処分可能な資産を回収して債権者に配当し、弁済しきれなかった分の債務を帳消しにします。
管財事件における破産手続きの免責に至る簡単な流れは、破産申立て→破産管財人の決定→債権者への配当→破産手続き終結となり、特別清算で必要だった債権者からの3分の2以上の同意は必要ありません。
特別清算手続きでの免責(一般的な意味での免責)と、破産手続きでの免責に至るまでは流れが異なるのです。
そもそも法律上の免責とは
免責とは、破産法第253条第1項で定められており、裁判所からの認可「免責許可決定」を受けて債務の支払い義務を失効する手続きです。
免責を受けるためには破産手続きが必要で、さらに支払い不能状態であると判断されなければなりません。
この支払い不能の定義はケースによって異なり、債務が少なくても収入や資産、申し立てをした人の健康状態などから判断して、返済が難しい状態だと認められれば破産が行えます。
ただし、すべての債務が消滅するわけではなく、税金や養育費などは非免責債権とされ破産後も支払い義務は残ります。
また、特別清算の場合も、税金等は支払わなければなりません。そして、税金や社会保険料が滞納されていると特別清算は行えません。
裁判所に特別清算の申し立てを行う時も、税金・給与・保険料・退職金などの支払いが滞納していないかチェックされます。
特別清算の注意点について
特別清算による債務整理を希望していたとしても、その会社の財務記録がきちんと行われていなかったり、不正行為が明らかな場合は債権者から協力を得ることが難しく、特別清算手続きが行えないことがあります。
会社の代表が連帯保証人となっている場合は、会社は特別清算ができても、返済義務が代表者に移ります。
そのため、代表者が返済できなければ個人で自己破産手続きをして免責をしてもらわなければならなくなります。
まとめ:特別清算における債務の扱いについて!破産の免責とは意味合いが異なる
いかがでしたか?今回は、特別清算における債務をテーマに届けしてきました。
特別清算は清算型手続きのため、破産と混同されやすい部分がありますが、特別清算の場合は破産とは違い債権者への同意がなければ進めることはできません。
そのような意味で、破産と比べると利用できる範囲が限定的だと言えます。事業所のタイプや債権者との関係によって、特別清算が向いている場合と破産が適している場合に分かれますので、弁護士にまずは相談することをおすすめします。