2020.10.2

2020.10.2

自己破産をすると退職金や退職手当も没収されてしまうのか?

破産手続を開始すると破産者の財産が換価処分され、債権者への弁済や配当に充てられます。

ここで気になるのが、「財産のどこまでが処分されるか」についてです。例えば、「退職金・退職手当」についてはどのような扱いになるのでしょうか?

そこで今回は、自己破産をしたときに退職金・退職手当も回収されてしまうのか?という点をテーマに解説していきます。

受領済みの退職金や未受領の退職金の取扱いについて

破産手続を行う中で退職金が処分されるかについては、状況によって取扱いが異なります。

退職金を「すでに受領している」か「まだ受領していない」かによって、自己破産時に処分の対象となる財産としての取扱が変わるのです。

それでは詳しく見ていきましょう。

①退職金をすでに受領している

退職金をすでに受領している場合、現金として預金口座などに保管されているわけですから、「現金」の財産として取扱いを受けます。

そのため、破産手続時には「現金」または「預貯金」として換価処分されるかどうかが決定されます。

②まだ退職金を受領していない

退職金をまだ受領していないケースでは、「退職金」としての取扱いを受けます。

自己破産では、この退職金を請求する債権も財産として取扱われるので、換価処分の対象となります。

ただし、破産法の規定によって換価処分の対象となるのは「退職金の1/4」となります。それ以外は自由財産として差押禁止債権となるので、処分の対象とはなりません。

退職金がもらえる状況で自己破産するとどうなる?

退職金がもらえる見込みがある中で自己破産をすると、前述の通り退職金のうち1/4が換価処分の対象となります。

しかし、会社から退職金を受け取るには退職する必要がありますし、それ以外だと破産管財人が直接会社から退職金の前払いを請求しなければなりません。

退職する年齢でもないのに仕事をやめてしまうと収入がなくなってしまいますし、会社へ請求が行くと破産者への悪影響も考えられます。

そこで通例では、破産者が破産管財人に対して退職金の見込み額の1/4の金銭を支払うことによって、退職金債権を破産財団から放棄する形をとります。

事由財産となる範囲の拡大

退職金は人によって多大な金額になるため、これから破産をするという人が支払うのも難しいですし、そもそも退職金が満額支払われるのかすら不明です。

このように退職金の1/4という原則は厳しすぎるため、裁判所によっては退職金債権のうち自由財産となる範囲を拡大する取扱いをしています。

自己破産時の退職金の取扱いについて

退職金に関しては、裁判所によって自由財産として認められる範囲を拡張する取扱いを行っていることをお伝えしましたが、全ての退職金が該当するというわけではなく、ケースごとに取扱いが異なります。

①退職済み+退職金を受け取っていない

既に会社を退職しており、退職金はまだ受け取っていない場合、退職金を受け取る見込みが高いと判断されます。

この場合は自由財産の拡張は認められず破産法の原則が適用され、退職金の1/4が換価処分の対象となります。

②退職していないが破産手続中に退職する見込み

まだ退職をしているわけではないが、破産手続中に退職する見込みが高い場合でも、退職金を受け取れると判断されるため、同様に自由財産の拡張は認められず、退職金の1/4が換価処分の対象となります。

③退職していない+破産手続中も退職する見込みもなし

このようなケースの場合、将来的に退職金が受け取れる可能性は不明なため、自由財産の拡張が認められます。

退職金の7/8が自由財産として取扱われるように拡張され、残りの1/8が換価処分の対象となります。

その上、この1/8の金額が20万円未満のケースでは、退職金全額が自由財産として認められます。

まとめ:自己破産をすると退職金や退職手当も没収されてしまうのか?

今回は、自己破産における退職金の取扱いについて解説していきました。

まだ受け取っていない退職金については「退職金債権」として換価処分の対象になりますが、ケースごとに自由財産として認められる範囲が異なるので、よく確認しておきましょう。

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