自己破産すれば増えてしまった債務を整理できますが、婚姻費用のように借金とは性質の異なる費用も支払う必要がなくなるのでしょうか?
今回は、婚姻費用や離婚の慰謝料、養育費などの、自己破産での扱いに迷う費用について詳しく解説していきます。注意点もあるので、該当する方はぜひご覧ください。
Contents
自己破産しても支払う?非免責債権と扱いのポイント
自己破産における婚姻費用や養育費などの扱いでもっとも気になるのは、一般的な借金と同じように免責の対象になるのかといった点ではないでしょうか?費用の性質やいつ支払うべきものであるかによっても変わるため、それぞれのケース毎に確認してみましょう。
①非免責債権であるか
婚姻費用や養育費などの自己破産での扱いは、次の2つの事柄によって変わります。
- 非免責債権であるか
- 自己破産手続き開始時期と費用発生時期の関係
自己破産は、借金などの支払いの義務がある金銭に関して、所定の手続きを踏むことで支払いの義務を免除してもらう制度です。支払い義務があるものは原則として「すべて」がその対象になります。しかし、一部例外があり、自己破産が認められてもその費用は支払い義務が残ります。これを「非免責債権」といいます。
非免責債権には、税金や社会保険料などの他に、婚姻費用や子どもの養育費などがあり、状況によっては離婚の慰謝料も含まれます。婚姻費用や養育費などは、相手の生活に必要な不可欠であると考えられるため免責対象にはなりません。
②自己破産手続き開始時期と費用発生時期の関係
同じ非免責債権であっても、自己破産手続きの開始時期との関係によって扱いが変わります。注目するのは、次の3つのどのパターンに当てはまるかという点です。
- 自己破産の手続き前に支払うべきであったもの(滞納しているもの)
- 自己破産の手続き後に支払うもの
- 自己破産後に支払うと約束しているもの
それぞれの中身や自己破産での扱いを詳しく確認してみましょう。
①自己破産の手続き前に支払うべきであったもの(滞納しているもの)
「共働きで毎月の生活費を夫婦で折半するはずのところ、半年前から夫は生活費を入れておらず自己破産の手続きをすることになった」このようなケースは、自己破産手続き開始前に支払うべきであった婚姻費用を滞納していることになります。
支払いの義務があるものを滞納しているため、自己破産の手続きでは破産債権の一部とみなされ、通常の債務と同じように債務整理の手続き中は督促や支払いが止まります。しかし、非免責債権であるため自己破産が認められても支払いの義務は残り、自己破産の手続きが完了後に支払うことになります。
②自己破産の手続き後に支払うもの
自己破産の手続きを開始した後に発生した婚姻費用や養育費などは、非免責債権である以前に、自己破産の手続きとは関係ないものとみなします。
自己破産は、手続き開始時点での債務や財産に基づいて手続きするもので、それ以降のものには関与しません。そのため自己破産手続き後に支払う婚姻費用や養育費などは、自己破産とは関係なしに定めた通り支払う必要があります。
③自己破産後に支払うと約束しているもの
「子どもが高校生になったら20歳までの期間は養育費を月10万円にする」と約束していたとします。約束したのは自己破産前であっても支払うべき期日を迎えていなければ、やはり自己破産とは無関係とみなします。
1つの費用を分割して考える
婚姻費用や養育費などの扱いについてもう1つ押さえておきたいのが、支払う時期によって分割して考えることです。①の「共働きで毎月の生活費を夫婦で折半するはずのところ、半年前から夫は生活費を入れておらず自己破産の手続きをすることになった」例を取り上げてみましょう。
自己破産前に延滞していた金額については破産後に支払わなければなりませんが、このケースでは毎月支払うべき婚姻費用が発生しています。自己破産手続き中に支払うものは「手続き外債権」として自己破産の手続きとは無関係になるため、本来の約束通りに毎月支払わなければなりません。自己破産手続き後の婚姻費用についても自己破産の手続きとは関係ないため、支払い義務はそのまま継続します。
このような費用は、自己破産手続き中でも差し押さえが可能です。支払うのが困難な金額であるならば、家庭裁判所を通して減額してもらうなどの方法を検討するのがいいでしょう。
離婚原因によって変わる自己破産での慰謝料の扱い
非免責債権には一部の離婚慰謝料も含まれますが、「一部」となるのは離婚原因によって扱いが変わるからです。次は、婚姻などとは異なる離婚慰謝料の扱いを詳しく確認しましょう。
不当行為の損害賠償として考える離婚慰謝料
離婚の慰謝料が婚姻費用などと異なるのは不当行為の損害賠償の1つと考えるためで、不当行為に対する損害賠償が、非免責債権に該当するかの判断はその原因によると法律で定められています。
非免責債権となる原因は、簡単にまとめると①故意または重大な過失でケガさせた、②悪意があって相手(相手の心)を傷つけた、です。
離婚慰謝料の免責・非免責
- 免責と判断されることが多いケース…浮気や不倫など
一般的に「不倫して傷つけてやろう」という悪意から浮気したり、不倫で身体に傷を負ったりしないため、免責となることが多い例です。 - 非免責と判断されることが多いケース…家庭内暴力(DV)など
家庭内暴力は、相手の体を傷つけている可能性があり、悪意を含んでいると考えられます。モラスハラスメントも精神的疾患を患っていれば身体の傷の1つとして認められることもあるようです。
婚姻費用などの支払いで注意すること
自己破産手続き前に支払うはずだった滞納している婚姻費用などは、自己破産手続きでは他の借金と同様に破産債権に含まれます。そのため免責の対象にはならなくても、他の借金と同様のルールを守らなければなりません。
自己破産の手続きでは、債権者は平等に支払いを受ける権利があります。しかし、自己破産の手続き中に滞納している費用を支払ったり、まとまった費用を支払ったりするのは、その平等性を犯していることになります。
これは法律で定められていて、「どうせ免責にならないから関係ない」という考えは通用しません。ルールを破った場合には、自己破産そのものが認められなくなったり、裁判費用が高くなったりするため十分に注意してください。
まとめ:自己破産でも婚姻費用は支払う?慰謝料や養育費の扱いについて
婚姻費用や養育費などは自己破産しても免責とはならず、自己破産の手続き開始前の滞納している費用は他の借金と同じ債権の一部として考えます。
他にも費用の支払いや離婚慰謝料の扱いなど、注意すべき点は多いでしょう。自己破産の手続き前にそれぞれの扱いについてよく整理しておくことをおすすめします。
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