「自社はなぜ資金ショートが起こりかけているのだろうか…」
「どうにかして資金ショートを防がなければならない…」
事業における資金ショートは倒産につながってしまいますが、それを未然に防ぐためにも資金繰りを把握することは大切です。
しかし、経営者のなかには資金ショートについてしっかり把握できていない方もいるのではないでしょうか?
本記事では、資金ショートが起こる原因と対策について解説していきます。また、全体把握のために資金繰りの概要も紹介しますので、是非ご覧ください。
Contents
資金ショートとは?
ショートは皆さんご存知の通り、短いという意味を持っていますが、実は「不足」という意味もあります。資金ショートは先ほどの後者の意味をとり、手元資金が不足して取引先や借入先に支払いができない状態を指します。
資金ショートと債務超過の違いとは?
資金ショートと債務超過は混同されやすいですが、それぞれ違う意味を持っています。債務超過は、文字通り債務(負債)が資産を超過している状態であり、会社が借りているお金が、会社の持っている固定資産や流動資産を上回っています。一時的に債務超過であっても、会社が破綻するわけではありません。
資金ショートは先述したように、すぐに使える現金や預金が枯渇している状態を意味しています。つまり、当座の支払いが資金ショートの場合できなくなっている状態ですので、債務超過よりも経営は厳しい状態であると言えます。
資金ショートになったらどうなってしまう?
資金ショートの先に待ち構えているのが、倒産です。資金ショートは手元の現金が不足して支払いができない状態ですので、手形や小切手の不渡りが出ると、銀行からの取引が停止される恐れがあります。
その他、取引先からの信用も低下させてしまうため、倒産に近づいてしまいます。
資金ショートが起こる9つの原因とは?
続いて、なぜ資金ショートが起きてしまうのか?その原因を9つ見ていきましょう。
資金ショートが起こる原因その1:キャッシュフローを把握していないことが原因になる
まず資金ショートの原因として、キャッシュフローを把握していないことが挙げられます。
損益計算書を見たときに、利益が出ていて黒字であれば安心する方は多いでしょう。しかし、黒字の場合でも手元資金が不足することは起こり得るので、注意が必要です。
なぜそれが起きるかというと、売上の中に売掛金や受取手形といった「未回収」の売上が含まれていて、すぐに現金化できないからです。売上が現金になるまで数ヵ月かかるため、仕入れ原価、人件費などの経費は先払いしなくてはならず、資金が不足してしまう場合があります。
資金ショートが起こる原因その2:資金繰り表を作成していないことが原因になる
キャッシュフローは過去のお金の流れを見ますが、資金繰りでは先々のお金の流れを読むことも大切です。
資金繰り表を作成しておけば先々の現金不足が予測できるようになりますので、資金ショートを予見して事前に対策をとることが可能です。気付かない間に収入と支出のバランスが崩れていた…という事態に陥らないためにも、経営者はお金の流れを過去も未来も確認しましょう。
資金ショートが起こる原因その3:経費の増大が原因となる
その他の大きな原因として、経費の増大が挙げられます。会社を経営して事業を拡大していくにつれ、経費は少しずつ増えていきます。
賃借料、人件費は毎月一定の金額であることが多いですが、仕入れ原価は材料費の高騰により増大することもありますし、顧問料やリース契約料なども増えているかもしれません。
経費が増大すると資金ショートに直結してきますので、それぞれ必要な経費なのかという点を定期的に見直していくことは重要です。
資金ショートが起こる原因その4:在庫の抱えすぎが原因となる
モノを販売する商売の場合、商品在庫の抱えすぎも資金ショートにつながります。
在庫は賃借対照表上で棚卸資産として計上されますが、現金を支払って仕入れた在庫は、もちろん販売することによって現金が戻ってきます。
まとめて商品を仕入れると単価が安くなるという事情もありますが、在庫の抱えすぎには要注意です。
資金ショートが起こる原因その5:売上の減少が原因となる
急激な売上の減少も収支バランスが崩れ、資金ショートに陥る可能性があります。売上が急激に減少してしまう原因としては、大口顧客との取引停止や倒産が挙げられます。
今まで大口顧客との取引に依存し、それを売上のメインにしていた場合、取引停止や倒産により急激に売上が減少してしまいます。大口顧客との取引のために抱えていた設備、社員などによる支出は削減しようにも難しいものがありますので、収支のバランスを崩してしまいます。
売上は変動するものですので、固定費はなるべく変動費となるようアウトソーシングを利用するなど、対策が必要です。
資金ショートが起こる原因その6:情勢の変化などによる外部要因が原因となる
予測できない情勢の変化や法律の改正も、急激に売上が減少してしまう原因になります。まさに昨今の新型コロナウイルスの感染拡大が、予測できない情勢の変化と言えますが、実際に新型コロナウイルスの感染拡大(2021年現在)により、さまざまな業種で倒産が増えてしまっています。
飲食店・ホテル・リラクゼーション施設など、国の支援でも賄えないほど影響を受けており、身の回りでも撤退された会社はあることと思います。
そのほか法律の改正により、それまで利用できた広告手法に変更が必要であったり、販売経路を見直さなければならなかったり、大きな影響を与えます。
このような外部要因は予測するのが非常に難しく、対応も苦慮する原因ですので、常日頃資金繰りには目を向けて内部留保を増やすなど備えが必要です。
資金ショートが起こる原因その7:仕入れ単価の高騰が原因となる
業種によっても異なりますが、仕入れ単価はそのときの状況によっても変動します。仕入れ単価が高騰すれば、提供するサービスや商品の価格も見直さなければならないこともあるでしょう。
しかし、仕入れ単価に併せて提供サービスを高くすることにより、顧客離れが考えられます。また、提供価格をそのままの状態では、収支バランスを崩してしまう原因になります。
どちらにせよ仕入れ単価が高騰することは、経営においてマイナスであることは間違いありませんので、いかにその影響を受けずに済むか、いかに提供サービスの差別化を図るかなどを考える必要があるでしょう。
資金ショートが起こる原因その8:設備投資が原因となる
設備投資は、効率化を図り収益性アップを見込んで導入するものですが、想定していたよりも売上が伴わないこともあります。
また、多額の現金による設備投資だけでなく、借入により設備投資されることもありますが、その返済が資金繰り悪化に大きな影響を与えることも容易に想像できます。
投資額に対して回収ができるという確証を得ることは難しく、導入してからでないと分からない部分は多々ありますが、必ず導入前にその投資が正しいものであるかを吟味することが、設備投資失敗を防ぐ唯一の手段です。
資金ショートが起こる原因その9:積み重なる借入が原因となる
金融機関などからの借入は事業拡大の為にも有効な手段の一つですが、経営悪化の中での、さらなる借入は資金ショートを引き起こす大きな原因になります。
経営が傾くなかで立て直しを図ろうと借入を繰り返すことで債務は膨らんでいき、遂には借入ができなくなり破産…という道では、関係者・保証人・社員など多くの人に迷惑がかかることになります。
復活できればよいですが、そのような事態も想定して、引き際の決断も時には必要であると言えるでしょう。
資金ショートを防ぐ6つの方法とは?
ここまで資金ショートの主な原因について解説してきましたが、資金繰り対策で倒産を防ぐ方法が6つありますので、続いて見ていきましょう。
資金ショートを防ぐ方法その1:経費の削減
資金ショート対策として、倒産を防ぐために取り組むべき方法は経費の削減です。
経費の削減を行う上で、重視すべきポイントは3点あります。
最初の1点は、「実施までのスピード」です。経費削減の実施はいつまでにできるのかを現実的に考えてみましょう。
2点目は、「削減金額の大きさ」です。その経費を削減することで、いくらの経費がセーブされるのかを確認しましょう。
3点目は、「経費削減リスク」です。顧問料や外注費などを削減した場合、それに伴って発生するリスクが生じないかを確認します。
たとえば、社員への給料を削減してしまうと、社員のモチベーションや生産性が下がるリスクもあるので、それらを慎重に考慮する必要があるということです。
上記の3点を踏まえて、コスト削減による問題が生じないと確認できれば、実施に移りましょう。
資金ショートを防ぐ方法その2:資産を売却する
不動産や遊休資産などの売却も、資金ショートによる倒産を防ぐための手段になります。不動産には固定資産税や管理費などがかかってきますから、収益性が低かったり、資金繰り悪化の原因である場合には売却をして現金化しましょう。
また、ゴルフやリゾートの会員権も経営維持のために必須な要素ではないため、売却を検討しましょう。
資金ショートを防ぐ方法その3:銀行にリスケジュールしてもらう
金融機関からの借入返済が苦しくなった場合、銀行にリスケジュールを申し入れましょう。借入のリスケジュールとは、返済期間や毎月の返済期限を調整変更することをいいます。
資金ショートを防ぐ方法その4:取引先への支払いを待ってもらう
取引先に交渉して、支払いを待ってもらうことも資金繰りを改善させる方法の一つになります。金額の大きい取引先であればあるほど、支払いを遅らせられれば資金ショートを回避できますが、その分取引先側のリスクも高くなってしまう点に注意しましょう。
今後の取引にも影響してくる恐れがありますので、支払いを待ってもらう先の選定は十分吟味した上で決めましょう。
資金ショートを防ぐ方法その5:支払いサイトの調整
支払い期日が30日であれば60日に伸ばすことができないか…等、支払いサイトの調整も資金ショートを回避するための手段です。シンプルに入金期日は短く、支払い期日は長くすることができれば、資金繰りはしやすくなります。
ただし、支払いサイトの調整は取引先からの信用にも関わってくるため、なぜ支払期日を長くするのか?という点はうまく伝える必要があるでしょう。どうしても支払い期日を伸ばさなければならないという状況の中では、取引先にもメリットになるような条件を加えるなど、工夫を考えましょう。
資金ショートを防ぐ方法その6:支払いに優先順位をつける
全ての支払いがどうしてもできない事が明確であれば、支払いの優先順位をつけなければなりません。また、その可能性があれば、事前に決めておく必要があります。
例えば、支払いの優先順位を考えなければ起こり得ることとして、差し押さえが一つ挙げられます。差し押さえになってしまえば、その他の支払いに影響を与え、連鎖的に信用を失うことにもつながります。
そして、支払いの優先順位を考える状況ということであれば、事態は相当悪化していると思われますので、その時点で相談先がなければ一刻も早く弁護士などに相談しましょう。
資金ショートする前の相談先
続いて、資金ショートする前にあらかじめ話をしておきたい相談先について見ていきましょう。
弁護士
倒産と一口に言っても清算型や再建型があったりして、選択肢は複数あります。限界を迎えてからの倒産ですと、周りへの影響も大きくなってしまうため、なるべく早い相談をおすすめします。
実際に倒産に至らなかったとしても、知識を得られれば、その先の決断にも大きく役立つでしょう。
中小企業再生支援協議会
中小企業再生支援協議会とは、その名の通り中小企業の再生に向けた取り組みを支援するため、特別措置法に基づいて都道府県ごとに設置されている、中立な公的機関になります。
中小企業再生支援協議会が支援する対象は、収益性はあるが財務上の問題を抱えている会社とされており、所属している弁護士や税理士などから、資金繰り悪化改善の相談が可能です。
再生事例には、複数金融機関のリスケジュールや中小企業再生ファンドによる債務圧縮、第二会社方式による再生などがあり、再生を軸に考えられている会社の相談先候補と言えます。
経営コンサルタント
経営コンサルタントと一口に言っても得意分野に違いがありますが、過去に経営再建をされてきた実績ある経営コンサルタントに依頼することで、道筋が見えることがあります。
現在では多くの会社でIT化が進められていますが、販売経路をWEB上に増やしたり、宣伝手法をアナログなものからオンラインに変えたりするだけでも、劇的に売上が伸びることもあります。
資金ショートになる前に、今の時代に合った頼りがいある経営コンサルタントが見つかれば、危機的状況を打破できることもあるでしょう。
親族・知人
親族や知人への相談することで、経営層からは見えない客観的な意見をもらうことができます。また、資金を融通してもらえないか相談することも可能でしょう。ただし金融機関などから借入が難しくなり、最終手段として親族や経営仲間をあたる場合、状況も状況ですのでその後次第で大きなトラブルに発展してしまうことが考えられます。
親族・知人に会社運営資金を融通してもらうのは、被害を与えてしまうリスクがあることを考えて、慎重に判断するとともに他に選択肢がないかをしっかり考えましょう。経営判断については、やはりその道のプロに頼るのが一番です。
金融機関
融資の相談だけでなく、現在借入している分についての先延ばしができないか、という相談が可能です。ただし、追加の担保を求められたり、貸し渋りにあう可能性があることを頭に入れておきましょう。
先を見越した行動と対応をとることが大切
資金繰り表を作っておらず、そもそも先々のお金の流れを把握していないことで起こる資金ショートは多々あります。ただし、資金繰り表を作っていて先々資金ショートに陥ってしまう可能性が見えている中であっても、実際にそれが起こってしまうことがあります。
もし、資金繰り表で資金ショートに陥る可能性が見えれば、なるべく迅速に相談先を見つけ、そして具体策を挙げて実際に行動することです。急激な売上低下ではなく、赤字が継続的に続いていく中であればその予測も立ちやすいでしょう。
今までのやり方の結果がその赤字を招いているわけですから、別の視点から起こせるアクションはないかを検討すべきです。
まとめ:資金ショートとは?9つの原因と6つの対策を解説!
今回は、資金ショートの概要とその原因・対策について解説してきました。
これまでの内容をまとめると、
- 資金ショートとは手元資金が不足して取引先や借入先に支払いができない状態で、その先には倒産がある
- 債務超過は債務(負債)が資産を超過している状態である
- 資金ショートが起こる原因は急激な売上減少や仕入れ単価の高騰などが挙げられる
- 資金ショートを避けるにはコスト削減やリスケジュールといった対策が必要である
以上の点が大切なポイントでした。
資金繰りを把握することがいかに健全な運営につながるか、そして倒産させないためにも大切かが理解できたことでしょう。資金ショートは、その原因を認識して対策をとることで防げますので、今回の内容を参考にしていただければと思います。
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